こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

舞妓はレディ

otello2014-09-15

舞妓はレディ

監督 周防正行
出演 上白石萌音/長谷川博己/富司純子/田畑智子/草刈民代/竹中直人/高嶋政宏
ナンバー 215
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“おおきに” “すんまへん” “おたのもうします”。この3語がきちんと発音できればとりあえずなんとかなる、そう教えられた見習い舞妓は努力を重ねる。何をしゃべっているのかわからない鹿児島と津軽の方言を由緒正しい京ことばに矯正する、物語は舞妓志望のヒロインが夢を叶えようと修業に身を置く日々を追う。行儀作法だけでなく歌や踊りの稽古を積み、晴れてお座敷に出る、その日常は厳しさの中にもユーモラスで人情あふれるエピソードが満載。何より“標準語”などといったお上のお仕着せ日本語よりも、1200年以上の歴史を誇る京ことばこそが大和言葉の美しさを象徴していると再認識させられた。

舞妓になるため小さな花街にやってきた春子を、お茶屋の女将・千春は追い返そうとする。偶然居合わせた言語学者・京野が春子にイントネーションを覚えさせられるかを馴染み客と賭けたため、春子は住み込みを認められる。

素朴な田舎娘の風情を持つ春子が、朗々と声を響かせて舞妓修行の不安や京野への恋心を歌い上げる。呉服と木造家屋ばかりで時が止まったような純和風の世界、そこで流れる西洋音楽はむしろ見事なミスマッチをなし、強烈な印象を残す。うれしいこと悲しいこと楽しいこと辛いこと、歌にすればどんな感情も消化され、すっきりした気持ちになれる。そんなミュージカルの醍醐味に加え、花街という業界の伝統と格式を守りつつ模索する生き残り策も描きこまれ、一見さんお断りの内幕がコミカルに再現されていた。特に、春子が“ビニール傘”で叱られるシーンは、花街がいかにイメージを大切にしているかがうかがえる。ここは、ディズニーランド以上に“夢の国”なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてストレスからの失語症も克服した春子は、やっと“お店出し”の日取りが決まる。出生の秘密を抱えながらも多くの人に支えられ成長する彼女の姿がまぶしかった。ただ、“スペインの雨”なら脚韻に意味があったが、“京都の雨”はイマイチ用途が不明だったな。。。

オススメ度 ★★★

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