こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

100歳の華麗なる冒険

otello2014-09-17

100歳の華麗なる冒険

監督 フェリックス・ハーングレン
出演 ロバート・グスタフソン/イバル・ビクランデル/ダビド・ビバーグ
ナンバー 208
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

大ボラなのか真実なのか、老人の数奇な人生は20世紀を揺るがせた大事件ばかり。スウェーデンという、かつての東西両陣営の緩衝地帯で生まれた男は、欧州と米国をまたにかけ世界の平和に貢献したと語る。ところが本人はその状況をわかっているのかいないのか、“なるようにしかならない”と歴史的な瞬間に立ち会ったにもかかわらず自慢も後悔もせず飄々としている。物語は、年老いた主人公がたまたま知り合った友人たちと共にする旅を描く。多くの死を目の当たりにしてきた彼は何事にも動じずひたすらマイペース、ギャングや警察に追われても泰然と構えている。もう俊敏には動けない、だが運命に身をゆだねる生き方にはむしろ達観した潔さを覚える。

100歳の誕生日に老人ホームを脱走したアランは、ギャングから預かったスーツケースを手にバスに乗る。廃駅で出合ったユーリウスと、追ってきたギャングを殺し逃避行を続けるが、仲間を増やしてさらなるギャングの追手をかわす。

その間、アランの思い出話は、ロシア革命、スペイン内戦、原爆実験、鉄のカーテン、東西冷戦と緊張緩和、そしてベルリンの壁崩壊とバラエティ豊富。時の最高権力者と直接言葉を交わすほどのVIPに上り詰めるのに、アラン自身にカネや名誉に興味がなく、ただ大好きな爆弾づくりをしているだけ。無欲こそが人間の心を平静たらしめ、第二次大戦と東西冷戦を終結させたと言っているようだ。自由陣営と独裁国家を何度も行き来する彼の姿は、“狂信者”と思っている相手でも顔を合わせて話し合えば理解しあえる可能性は高まると訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一応、明確な敵と“ルール”があった20世紀の戦争とは違い、21世紀はテロリストとのルールなき戦争の時代だ。ギャングたちはテロリストのメタファーで、スーツケースの大金は不正な資金。問答無用で襲ってくるギャングとは交渉の余地はない、だからアランも暴力で対抗するしかない。対テロ戦争は根絶するまで終わらない、アランの知恵をもってしてもそんな答えしか出ないのは、現代の混迷を象徴していた。

オススメ度 ★★★*

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