こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

デビルズ・ノット

otello2014-09-27

デビルズ・ノット DEVIL'S KNOT

監督 アトム・エゴヤン
出演 コリン・ファース/リース・ウィザースプーン/ブルース・グリーンウッド/アレッサンドロ・ニヴォラ
ナンバー 225
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

証人は嘘をついている。被害者家族は秘密を抱えている。警察は失態を隠している。深い森の奥で発見された3人の小学生の無残な死体、“異常者”か“悪魔崇拝者”の仕業として、捜査員はそれに沿った証言だけを集めていく。物語は1993年に起きた悲劇の発端から裁判に至る過程を追う。強要された自白、姿を消した血まみれの男、でっち上げられた目撃談。この顛末に違和感を覚えた調査員が独自の聞き込みと証拠の再検討を進めるうちに、物的証拠は一切なく、限りなく冤罪に近い案件であるのが明らかになっていく。真実はなお藪の中、人は見たいものを見、信じたいことを信じる。映画は人々の“思い込み”という集団心理にメスを入れる。

子供たちが惨殺され、3人の少年が逮捕される。その素行から動機は十分、警察は早々と犯人と決め付けて公判を進めていく。だが、不自然さを感じた調査会社のロンは当事者たちの聞き取りを始める。

容疑者たちはいかにも“こいつならやりかねない”と思わせる風貌、見守る市民も警察発表を疑わない。そんな彼らに救いの手を差し伸べるようとするロン。日本なら“少年の人権を守る”と息巻く安っぽい弁護士が登場するところだが、ロンはあくまで冷静に証言の矛盾を見つけ証拠の不備をついていく。そして暴かれた警察の怠慢と巧みな誘導尋問、警察に弱みを握られた詐欺師の存在。それでも弁護士資格のないロンの法廷での影響力は小さく、ただ疑問を投げかけるばかり。一方で少年たちは自らの無実を主張する前にむしろ諦めた様子。彼らの大人や社会を全く信用しないニヒルな態度こそ、警察がいかに過酷な取り調べを行ったかをうかがわせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに被害者のひとりの母・パムが新たな物証をみつけ少年たちの犯行を疑いだす。事態はいよいよ混迷を深めるかに見えるが、裁判官も陪審員も関心を示さない。反対意見は許さない、町を支配する“有罪が既定事実”の空気が何よりも恐ろしかった。。。

オススメ度 ★★★*

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