こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドラキュラZERO

otello2014-10-11

ドラキュラZERO DRACULA UNTOLD

監督 ゲイリー・ショア
出演 ルーク・エヴァンス/サラ・ガドン/ドミニク・クーパー/チャールズ・ダンス/ザック・マッゴーワン/ポール・ケイ
ナンバー 237
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

その魔物と対峙した時、彼の心に浮かんだのは死の恐怖ではなく生への希望。わが身は怪物と成り果ててもかまわない、だが家族と領民の暮らしは必ず守り抜く。そう決心した男は悪魔の取引を自ら望む。物語は中世トランシルヴァニア、トルコ軍の脅威に敢然と立ちあがった領主の戦いを描く。圧倒的な数と装備の敵軍に対し、自軍は貧弱、ならば一人で大軍を止められる魔力を手に入れるしかない。理不尽な状況に追い込まれる中、家臣や住民の冷ややかな視線に耐えながら決断を下さねばならない小国のリーダーの悲哀がリアルに再現される。そして超人的な戦闘能力をまとっても、今度は血液への強烈な渇きが待っている。世に恐れられてきた吸血鬼の、そんな葛藤が共感を呼ぶ。

トルコのスルタン・メフメトから1000人の子供を要求されたヴラド公は、わが子を差し出す直前にトルコの使者を斬り殺してしまう。開戦すれば全滅は必至、ヴラドは山の洞窟に棲むヴァンパイアから不死身の肉体と強大なパワーを授かる。

かつて“串刺し公”と悪名をとどろかせていたヴラドは妻と息子を得て善良さに目覚め、トルコに侵略されるまでは平穏な日々を送っていた。ところが、ヴァンパイアの血を飲み干したあとは再び残虐さを取り戻す。孤軍奮闘の末、数千人のトルコ兵を倒し残らず串刺しにして荒野にさらす、目を覆うような苦痛に満ちた死ですらヴラドの手にかかると鮮血の美学に昇華される。さらに彼の翼となって意のままに操られるコウモリの大群が、不気味さの中にも計り知れない闇のエネルギーを発散させていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、一度魔界に堕ちたものへの人間の目は厳しく、救国の英雄であるはずのヴラドも例外ではない。人々から忌み嫌われ、日光を避け人間の血をすするうちは永遠の命が保障される。しかし、それは同じ時間、孤独と苦悩が続くということ。過酷な運命を甘んじて受けたヴラドを支えているのは妻への思い、時代を超えてもなお色褪せない愛だけが救いだった。

オススメ度 ★★★

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