まほろ駅前狂騒曲
監督 大森立嗣
出演 瑛太/松田龍平/高良健吾/真木よう子/本上まなみ
ナンバー 246
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
“わりと真面目”な便利屋の事務所兼住居に充満する弛緩しきった空気は少し淀んできている。それは相棒に告げねばならないことがあるのになかなか口に出せないから。おまけに隠し事をしていると疑われている。特にいてほしくはないけれどいなくなるとさみしい、つかみどころはないけれど存在感は大いにある男を松田龍平が今回も脱力感たっぷりに演じている。己の問題に向き合おうとしない彼が“逃げなければ死ぬときは逃げる”と、やっぱり面倒を避けようとする姿に、無理しない生き方の極意が凝縮されていた。物語はわけありの女の子を預かる便利屋が、ヤクザとカルト教団の抗争に巻き込まれそうになりつつも、持ち前の誠実さで切り抜けていく過程を描く。
多田は凪子から行天の“遺伝上の娘”・はるの世話をしてくれ依頼されるが、行天には自分の姪と嘘をつく。同時に地元ヤクザから無農薬野菜を売るカルト教団の張り込みを頼まれるが、そこはかつて行天が身を置いていた団体だった。
いざ、はるを目の前にすると、ふてくされはしても、行天はいつの間にか彼女の心をつかんでいる。子供が嫌いと言っていても、頼られれば受け入れてしまうのだ。無責任な風来坊でもモラルは失っていない、社会に適応できなくても人の気持ちは理解できる、そんな行天の優しさが身に染みる。一方で多田は、行天のペースに振り回されながらも、気が付くとトラブルを解決している彼に奇妙な絆を感じている。友情でもビジネスでもない30男同士の微妙な距離感が絶妙の間で再現されていた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ところが、バスジャックに出くわしたあたりから映画は失速する。行天の過去が明らかになったりするが、刃物や拳銃が出てくるわりには緊張感もリアリティもなく、取ってつけたような印象ばかりが残る。10歳の小学生が引き金を引くのもありえないが、容疑者なのか人質なのか定かでない人間に向かって捜査員が発砲するだろうか。。。
オススメ度 ★★