こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの

otello2014-10-24

グッバイ・アンド・ハロー 父からの贈りもの
Greetings from Tim Buckley

監督 ダニエル・アルグラント
出演 ペン・バッジリー/イモージェン・プーツ/ベン・ローゼンフィールド/ノーバート・レオ・バッツ
ナンバー 249
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

名前は知っている、歌も聞いたことはある。だが、記憶からは欠落したままの父。若者にとって自分と母を捨てた父に“瓜二つ”と言われるのは、歯がゆさを超えむしろ反感さえ覚えてしまう。物語は早逝した歌手の “戸籍上の息子”が、かつてのバンドメンバーから父のエピソードを聞かされるうちに、己の人生を見つめ直していく姿を描く。家族よりも音楽を選んだ父は最初からいないものとあきらめていた。ところが、受け継いだ才能を生かし、いつしか父と同じ道を進もうとしている。そして父の仲間と共にステージに立ち、意図的に避けてきた父への理解を深めていく。愛情ではなく音楽でつながった父と息子、愛された思い出はなくても、父の思いは確実に伝わっているのだ。

伝説のミュージシャン・ティムの追悼コンサートに招待されたジェフはNYに赴き、事務員のアリーと仲良くなる。ふたりは昔ティムが住んでいた家を訪ねるなど、親密になっていく。

並行して若き日のティムが語られるが、当時のティムは今のジェフと同年代。ギターを手にライブハウスを回り、ジェフの母となる女を口説いている。時代はちがっても似たもの親子、やっぱり血は争えない。それを自覚したジェフは、気乗りしなかったにもかかわらず聴衆で前でティムの歌を熱唱し、美声を遺してくれた父に感謝する。「ライブの後に君の寝顔を眺めていた」という言葉に、父の息子に対する気持ちが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ジェフのパートもティムのパートも散文的かつ断片的で、感情的な盛り上がりにも乏しい。ジェフがティムの人となりを発見していく過程で何らかの化学反応が起きるのかと期待したが、そのあたりも抑制されている。もちろん、ジェフがティムへのリスペクトをマイクに向かって爆発させる形で表現されてはいるが。ジェフ・バックリーに馴染みがない者にとってはいささか物足りない作品だった。

オススメ度 ★★

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