美女と野獣 LA BELLE ET LA BETE
監督 クリストフ・ガンズ
出演 レア・セドゥ/ヴァンサン・カッセル/アンドレ・デュソリエ/エドゥアルド・ノリエガ
ナンバー 258
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
嵐に襲われた商船、鬱蒼と茂った森、深い緑に覆われた中世風の城。ロマン主義絵画をスクリーンに再現したような大胆な構図とやや暗めの映像はおとぎ話の世界に見る者をいざなう。そこは愛の枯れ果てた場所、いまだ呪いは解けず絶望と悲しみの咆哮ばかりがこだまする。物語は失態を犯した父を救うために人質となった娘が、獰猛な容貌の男の凍った心を溶かす過程を描く。男もまた、女心を理解しないゆえに不器用に思いを押し付けてしまうが、実は紳士的に振る舞いたい。映画は原作の原点に帰り、主人公の秘められた真実に迫る。それはリリカルでもドラマティックでもない、後悔と苦悩に満ちた追憶。だが、美しく道理をわきまえたヒロインが彼の苦痛を和らげていく。その上で、人間の価値は外見ではなく行動で評価されるべきと訴える。
森で迷った商人は無人の城で歓待されるが、バラを盗もうとして野獣に捕らわれる。許しを得て一時帰宅するが、顛末を聞いた娘のベルが父の身代わりとなって野獣の城に行く。野獣は夕食以外の時間はベルに自由を与えて彼女をもてなす。
ナイフに映ったベルの美しさに胸躍らせながらも、自らの醜さゆえベルに顔を見せない野獣はつい傲慢な態度をとってしまう。偏見のないベルはそんな野獣の卑屈さに腹を立てているのに、野獣はベルに嫌われるのを恐れている。いや、かつて妻を己の放った矢で殺してしまった野獣は、また大切な者を失うのを危惧しているのだろう。そのあたり、優しいが自己主張もするベルと自分の気持ちに素直になれない野獣の距離感が、もどかしくも愛おしい。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて野獣の城の存在を知った強欲な男たちが財宝を求めて侵入してくる。野獣は賊を撃退するも瀕死の重傷を負い、城は崩壊に向かう。そしてベルの流した1滴の涙が、謙虚に愛してこそ愛される喜びを知ることができ、人生に本当に必要なものは何かを教えてくれる。ただ、21世紀に甦らせるなら、もう少し現代的な解釈を加えてほしかった。。。
オススメ度 ★★*