こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

花宵道中

otello2014-11-13

花宵道中

監督 豊島圭介
出演 安達祐実/渕上泰史/小篠恵奈/友近/津田寛治
ナンバー 263
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

体は開いても心は許さない。夢に希望を託しても現実を見つめることも忘れない。そんな、初心な生娘の笑顔と大胆に啖呵を切る気風の良さで人気者になった女郎が、道ならぬ思いにとらわれてしまう。男の言葉を信じてはいけない。本気で惚れてはいけない。遊郭の掟はわきまえている。それでも出会ってしまった運命の男。物語は廓の中で育ったヒロインの哀しい愛を描く。不自由だからこそ燃え上がる、叶わないとわかっているからすがりつく。女の情念と男の未練、行き場のない者同士の切なくも儚い恋の行方がリリシズムあふれる映像に再現される。安達祐実の、少女のような童顔と成熟した肉体のギャップがさらなる哀れを誘う。

もうすぐ年季明けの朝霧は、縁日で知り合った半次郎と簪の修理を口実に後日会う約束をする。当日、待ち合わせに間に合わずあきらめかけていたが、吉田屋の接待で座敷に上がった半次郎と再会、だがお互いに声をかけられない。

好きな男の目の前で好きでもない男に無理やり貫かれる。朝霧を身請けしようとする吉田屋は、彼女と半次郎の視線の絡みからふたりの関係を見抜き、あえて半次郎の前で朝霧を抱く。セックスさせるのが生業であるにもかかわらず、露わになった肌や足に羞恥と屈辱をにじませつつも喘いでしまう朝霧。その表情は、座したままの半次郎に助けを求めているようでもあり誘惑しているようでもある。奪いたいのに動けない、見られたくないけれど見届けてほしい、嫉妬と怒り、自制と自虐といった複雑にねじれた感情が彼らの胸に火をつけ、後戻りできないところまで追い込まれていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

くすんだ日常と対比させた艶やかな花魁道中、それは心底惚れた男のためにだけに見せる最期の晴れ舞台。半次郎が命がけで用意した着物と高下駄を身につけ外八文字で歩く朝霧は、妖艶でありながらも凛々しさを漂わせ、この通俗的なストーリー展開に花を咲かせていた。。。

オススメ度 ★★*

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