こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

6才のボクが、大人になるまで。

otello2014-11-17

6才のボクが、大人になるまで。 BOYHOOD

監督 リチャード・リンクレイター
出演 パトリシア・アークエット/エラー・コルトレーン/ローレライ・リンクレイター//
ナンバー 267
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

口うるさいママはいつもイライラしている。こましゃくれた姉とはケンカしてばかり。でも、たまに会いに来るパパはボクたちを楽しませてくれる。本当はパパも一緒に住んでほしいのに、それを言い出せない空気をママが発散させている。カメラはそんな環境に育った子供の多感な少年時代に寄り添い、12年という時間の流れのなかで彼らの成長を追う。惚れっぽいママのせいでなかなかまともな生活ができないのに、パパは他の女性と結婚してしまった。それでも何とか道を踏み外さず生きてこられたのは、やっぱり愛されているから。ママが離婚・再婚する中で、そのたびに新しい家族ができ、別れもある。もう顔も見たくない人間もいるがずっと友達でいたい人もいる、それらの人間関係をホームパーティでメンテナンスする米国人の習慣がうらやましい。

ママと姉・サマンサの3人で暮らすメイソンは、久しぶりに帰ってきたパパにボーリングに連れて行ってもらい大喜び。だが、家に帰るとママとパパが口論を始め、パパは追い返されてしまう。

ママは通っていた大学の講師と再婚、連れ子の姉弟とも仲良くなれたのに、継父はアル中のDV男。着の身着のまま逃げだして義姉弟は置き去りにしてしまった。しかし、最悪の状況になってもパパと過ごす時だけは嫌なことを忘れられる。離婚率の高い米国ではありふれた光景なのだろう、心を傷つけられた子供が精いっぱい感情を抑制している姿が切ない。パパが自分たちと同じ失敗をしないようにとサマンサに避妊話をするシーンは、「正しい家族計画」の大切さを教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

男運は悪いが精いっぱい育ててくれたママ、遠くから優しく見守ってくれたパパ。幸せな家庭は築けなかったけれど、親の子に対する思いはきちんと伝わっている。家族の固い絆には縁遠かったけれど、同級生より早く大人になれた。淋しくてたまらないのに、メイソンの高校卒業を期に“子育て卒業宣言”するママの気持ちが痛いほどリアルだった。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓