こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サン・オブ・ゴッド

otello2014-11-21

サン・オブ・ゴッド SON OF GOD

監督 クリストファー・スペンサー
出演 ディアゴ・モルガド/ローマ・ダウニー/グレッグ・ヒックス/エイドリアン・シラー/アンバー・ローズ・レヴァ
ナンバー 236
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

脚萎えの男を歩かせ、ほとんど空の籠に食料を満たし、嵐の湖に立ち、死者を甦らせる。常に笑みをたたえたような柔和な口元から発せられる言葉は真理を伝え、その御手の為す業は神の力を象徴する。物語は、イエス・キリストの誕生からヨハネによる洗礼、弟子との旅、そしてエルサレムでの死刑・復活までを描く。イスラエルの民に重税を課すローマ人も、ユダヤ人を束ねる神殿の祭司も、今や民衆から支持されるイエスの人気は侮れない。かといって排除するには口実が必要。ローマ法とユダヤ律法の解釈と適用を巡って逡巡し、駆け引きする当時の政治家と宗教的指導者の苦悩が新鮮だ。映画はそれらのエピソードをディテール豊かに丹念に積み重ね、イエスの生涯を端整な映像に再現する。

明星輝く夜、生を受けた赤ちゃんはイエスと名付けられ、ローマ人の支配に苦しむ人々は彼を救世主と期待する。横暴な総督・ピラトの圧政下でイエスは多くの弟子を集めるが、ユダヤ教大祭司・カイアファは快く思っていなかった。

伝道の過程でイエスは“小さな奇跡”を何度も実演するが、ノアのように巨大な方舟を作ったりモーセのように海を割ったりはしない。それは彼が神の子であるとともに人間でもあるということなのか。聖書にしるされた様々な名場面がこの作品でも演じられるが、イエスが行動を起こす時にいちいち大げさなタメを作ったり音楽で感情を盛り上げたりせず、淡々と描写する。実際に現場に立ち会った人は、すぐには彼の偉業の意味が十分に理解できず、後で思い返して“すごいものを目撃した”と思うのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてユダの密告と最後の晩餐を経て、イエスはカイアファの手に落ちる。さらにピラトから鞭打ち刑を宣告された後、カイアファの煽動によって磔刑に処せられる。全般的に様々な聖書の記述があくまで“正統派”にこだわる演出でまとめられていて、非キリスト教徒にもわかりやすく整理されていた。

オススメ度 ★★*

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