こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストックホルムでワルツを

otello2014-12-06

ストックホルムでワルツを Monica Z

監督 ベール・フライ
出演 エッダ・マグナソン/スベリル・グドナソン/シェル・ベリィクビスト/
ナンバー 282
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

仕事と子育てに追われながらもステージに立つ夢はあきらめない。チャンスは1度と言われると他の事はすべて放り出してしまう。そしてやっとつかんだスターの座、だがその先には底なしの孤独が待っている。物語は1960年代のスウェーデン、米国発祥のジャズを母国語で歌って大ヒットさせた歌手の若き日を描く。胸躍るサクセスストーリーとは程遠い、極めて自己中心的なヒロインはわが子を置き去りにし父と対立しても歌い続け、利用価値のある人間を踏み台にしてひたすら成功への道を突き進む。無謀と思えるチャレンジをしなければ“木の上からの風景”は見られない、人生とは選択の連続であるとこの作品は教えてくれる。

田舎町の電話交換手・モニカはアフター5にナイトクラブで歌う日々。ある日、米国人にスカウトされニューヨークに招かれる。ところが、観客の反応は散々、モニカは失意のうちに帰国するが、歌詞をスウェーデン語に訳して歌うと予想外にヒットする。

NYでの失敗の原因は“北欧の白人女”がジャズを歌う違和感なのか。当時はジャズ=黒人音楽、聴衆(といってもみな白人)は冷めた態度でモニカを迎える。一方で、無名のモニカには楽屋が用意されているのに、黒人プレーヤーたちには楽屋がない。扱いの差に、まだまだ人種差別が色濃く残る米国人の考え方が反映されていた。また、訳詞ジャズで大金を手にしたモニカが一軒家を買う時に、不動産屋は同棲相手の映画監督に代金の話をする。米国の黒人蔑視とスウェーデンの女性軽視、現代ではありえない境遇が“常識”だったことに驚かされる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後もモニカは様々なスタイルを取り入れ、スウェーデンのショービジネス界に君臨する。ただ、モニカは北欧では絶大な人気を持つ歌手だったそうだが、彼女の功績を知らぬ者にとってこの映画の語り口は敷居が高かった。父との確執、娘への思いなど、普遍的な感情に訴えるエピソードがもう少しあれば共感できたのだが。。。

オススメ度 ★★*

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