こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビッグ・アイズ

otello2014-12-17

ビッグ・アイズ BIG EYES

監督 ティム・バートン
出演 エイミー・アダムス/クリストフ・ヴァルツ/ダニー・ヒューストン/クリステン・リッター/ジェイソン・シュワルツマン/テレンス・スタンプ
ナンバー 291
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

明るく社交的、知的でエキゾチックな会話、誰をも魅了する笑顔で瞬時に人の心をつかむ男。だがその正体は偽りで固めた過去と現在を守るためにさらなる嘘を上塗りし、いつの間にかそれを事実と思い込んでいる誇大妄想狂だった。物語はそんな夫におだてられ、脅されて、隷属状態で大衆アートを描き続けてきたヒロインの苦悩と葛藤を追う。シャイで世間知らずで孤独な彼女が自分を取り戻せるのは、唯一絵筆を握っている時間だけ。ところがそこで生み出された作品も彼女の創作とは認識されない。真実を見透かすような大きな目の肖像が人生を奪われた彼女の悲しみを象徴していた。まだまだ女性の地位が低くシングルマザーが簡単に生きていけなかった時代の米国の空気が濃密に反映されている。

娘を連れて家出したエイミーは公園で日曜画家のウォルターと出合い結婚する。ある日、「ビッグ・アイズ」の作者を大富豪に問われ、ウォルターが名乗り出る。その後もウォルターはエイミーの絵を自作と称して売り続ける。

ポスターやはがきに絵を印刷すると大ブームになりウォルターは大儲けするが、エイミーはアトリエに閉じ込められたまま。娘にさえ知られてはいけない秘密に胸を痛めるが、エイミーはなすすべもなくウォルターに言いくるめられる。このあたり、自我を確立できていないエイミーが食い物にされる哀れさ以上に、マスコミやイベントを積極的に利用して一つの世界観を構築するまでに昇華されたウォルターの舌先三寸が楽しめる。嘘をつくときは自信満々に断言し、疑いは断固否定することが大切なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてウォルターの元から逃げ出したエイミーと娘はラジオで告白、絵の真の作者は誰かを争う裁判となる。法廷でも自己弁護を繰り返した上、本当に自身を弁護するウォルター。醜態をさらしてもなお非を認めないウォルターの、歪んだ信念に裏打ちされた姿が滑稽だった。こういうキャラクターを演じたらクリストフ・ヴァルツの右に出る役者はいないだろう。。。

オススメ度 ★★★*

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