こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

暮れ逢い

otello2014-12-24

暮れ逢い UNE PROMESSE

監督 パトリス・ルコント
出演 レベッカ・ホール/アラン・リックマン/リチャード・マッデン/シャノン・ターベット
ナンバー 296
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

執拗に絡み合う視線、触れ合う手と手。自分の気持ちは通じているはずなのに抱きしめられない。窓越しに見つめる彼女のシルエット、でもそこは夫と夜を過ごす寝室。物語は社長の屋敷に住み込みで働くことになった若者が、若く美しい社長夫人への煩悶を膨らませていく姿を描く。すぐそばにいるのに手が届かない。彼女も気まぐれに求めてくるが、夫や子供の目が気になって自制してしまう。勤勉と忠誠が欲望に勝る、いかにもドイツ人らしいお堅い気質が、恋を人生の喜びではなく耐え忍ぶ苦悩に変えていく。ビジネスで成功しても、財産がいくらあっても、幸福のパズルは愛する人というピースが欠けていては完成しないとこの作品は教えてくれる。

製鉄会社に就職したフリッツはカール社長に能力を認められ、カールの自宅療養を機に秘書に抜擢される。下宿を引き払いカールの邸宅で暮らしはじめたフリッツは、カールの妻・ロッテの優美さに惹かれてく。

カールはロッテと親子ほど年が離れているうえ、もはや冷め切っている。だが、男としてののプライドか、家長の役割を果たさせている。ロッテはフリッツを“籠の鳥”生活から一時夢を見させてくれる存在と意識しているのか、彼の好意をうれしく感じながらも曖昧な態度をとり続ける。成熟した大人たちの思惑とは別に、経験値の低いフリッツはカールへの忠義とロッテへの思慕、加えて下宿に残してきた恋人との間で千々に心を乱す。奪うほどの勇気はないがあきらめられない、そんなフリッツの葛藤がもどかしいまでに抑制の効いた映像に反映されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて自ら提案したメキシコの鉱山開発の責任者に指名され、フリッツは旅立つ。大西洋を隔てた思いは手紙に託されるが、戦争勃発で安否のわからぬまま歳月だけが過ぎていく。距離と時間の試練にさらされても理性的な振る舞いを貫いたふたりの崇高な愛、だが映画的にはもっと感情に流されて欲しかった。。。

オススメ度 ★★

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