天国は、ほんとうにある HEAVEN IS FOR REAL
監督 ランダル・ウォレス
出演 グレッグ・キニア/ケリー・ライリー/コナール・コラム/
ナンバー 1
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
聖職者として、夫として、父として強い男であろうとする主人公は、どれほど困窮しても他人に援助を求めない。自分は住民の手本となるべき人間、死にゆく老人には赦しを与え、困っている人のツケは後回しにし、便宜を図ってもらうのを潔しとしない。ただ家族と地域の人々のために黙々と働くだけ、時に自らの経験と聖書の引用を踏まえ説教を行う以外は。物語は、彼の幼い息子が臨死体験を語った後に起きる騒動を描く。そして息子を信じるか迷う父もまた、真実を模索しながら自らの信仰を問われていく。聖書の記述を事実と主張するほど狂信的ではない、一方で息子の発言に嘘は感じないという葛藤を通じて、頼られるばかりではなく、頼ることで人と人は支え合えると訴える。
ネブラスカ州の牧師・トッドの息子・コルトンが盲腸をこじらせ危篤状態になる。無事手術は成功するが、コルトンは天国で天使やイエスらしき人物を見たと言い出し、さらに手術中の両親の行動を言い当てる。
退院後も知らないはずの祖父や姉に会ったと話すコルトン。最初は科学的な答えを探していたトッドも、いつしかコルトンは誠実に体験を口にしているのではと考え始める。ところが実生活では請求書の山、専業主婦の妻はコルトンよりも破産を心配している。それでもトッドは妻子を安心させようと悲観的な言葉は慎む。そのあたり、米国中西部の善良で保守的な土地柄と、借金まみれでも生活水準を下げない中産階級の実態が再現される。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
映画はコルトンの見たビジョンを映像化するが、そこで神の奇跡を強調したり、逆に否定もせず、不思議な出来事として処理するのみ。懐疑的なればいくらでもケチは付けられるが、トッドが大勢の聴衆の前で行ったスピーチ同様「信じれば意識が変わる」のだ。神はいないかもしれない、だが親が子を慈しむ気持ち、子が親に頼る気持ち、隣人が隣人を慮る気持ち、それら“愛”と呼ばれる心の動きは必ず存在すると思わせてくれる作品だった。
オススメ度 ★★*