こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スペシャルID 特殊身分

otello2015-01-08

スペシャルID 特殊身分

監督 クラレンス・フォ
出演 ドニー・イェン/アンディ・オン/ジン・チェン/コリン・チョウ
ナンバー 299
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

カンフー、ボクシング、ムエタイなど打撃系の他に、首を絞め関節をキメる組手系の技まで駆使し、変幻自在の攻撃を見せる主人公。型にはまらない自由さゆえにどんな相手にも応用が効き、場所を選ばず戦える。いわばストリートで鍛えたケンカ殺法、物語は卓越した格闘術を身につけた上、大胆な行動力と冷静な洞察力で黒社会の幹部となった偽装身分の男が大暴れする姿を追う。腕っ節が強い上に度胸が据わっていなければナメられる、正体がばれたら殺される、だがそんな緊張状態を楽しんでいるかのよう。危機また危機の連続で過剰に分泌されるアドレナリン、それこそが彼の生きる証なのだ。細かい設定よりも命がけのアクションを重視するサービス精神はいかにもメイド・イン・ホンコンらしい。

ボスのホンから組織のブツを横取りしたサニーを探るように頼まれた香港警察の潜入捜査官のロンは、別件でサニーを調べている警察の上司からも同じ命令を受け南海市に行く。そこでは本土の女刑事・ファンがロンの相棒兼監視役につく。

組織同士の縄張り争いだけでなく、裏切り者に目を光らせ、警察にも気を配るギャングたち。親分子分の契りも兄弟分の絆も過去の遺物とばかり、罠を仕掛け不意打ちをくらわして邪魔者を排除していく。サニーはかつてロンに助けられた身でありながら今や取引を仕切るほどに成長し、ホンも恐れる力を持っている。ホンとサニーの間で逡巡するロン、さらに警察官としての職務も果たさなければならない。ところが映画は彼の苦悩や葛藤、男の哀しみといったノワール的な湿っぽさを取り除き、パワフルで泥臭いロンの戦いに焦点を当てる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

クライマックスは逃走を図るサニーのクルマの屋根に飛び乗るファンとそれを追撃するロン、激走する2台のクルマとしがみつく女の壮絶なカーチェイス。息詰まる疾走感のみならず、振り回され突き飛ばされても食らいつくファンの肉体的な痛みまで伝わってくる映像は、思わずのけぞるほどの迫力だった。

オススメ度 ★★★

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