きっと、星のせいじゃない。 THE FAULT IN OUR STARS
監督 ジョシュ・ブーン
出演 シャイリーン・ウッドリー/アンセル・エルゴート/ローラ・ダーン/サム・トラメルウィレム・デフォー/ナット・ウルフ
ナンバー 10
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
いつまで生きられるかわからない、でも悲劇のヒロインになるのはイヤ。普通の青春はむりでも、恋にときめく気持ちは残っている。ポジティブに頑張っているわけじゃないけれど、おとなしく運命に流されるつもりもない。何よりも“かわいそうな子”と同情されたくない。物語はそんな、余命宣告された少女の日常を追う。両親の思いは痛いほど理解しているが時折ワガママを言ってしまうし、他人の意見にも斜に構えた答えを返す。まだ17歳なのに死を間近に迫った現実と自覚している彼女の、第三者の目で自分を見つめるような覚めた視線と、感情的にならないように自制する姿が切なくも哀しい。
末期がん治療を受けながら自宅で過ごすヘイゼルはサポートグループに出席、右足を失ったガスと出会う。波長が合いすっかり打ち解けたガスに、ヘイゼルは愛読書を贈る。それは結末の途切れた小説だった。
主人公の“その後”を知りたいと願うヘイゼルの代わりに、ガスは著者・ピーターにメールを出し訪問の約束を取り付ける。ガスも死線をさまよった経験を持ち、体が動く間は何事にも積極的にチャレンジする行動力が身についている。悩んでいるより走り出す、彼もまた命の儚さと重さを熟知しているから“やらなかった後悔”だけはしたくないのだ。ふたりはピーターとの面会に期待を膨らませてアムステルダムに飛ぶ。病気を理由にあきらめたりはしない、そのあたりを非常にライトな感覚で再現し、安っぽい涙を誘おうとしない演出が心地よい。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ところが、憧れの人だったピーターに軽くあしらわれ、ふたりは彼の態度の意味が分からないまま帰国する。ピーターは己の命よりも大切なものを失った深い絶望を創作に昇華した、だがヘイゼルとガスにやさしくしなかったのはもう思い出したくないからなのだろう。苦しむヘわが子を見るのは何よりもつらい、一方で過剰な心配を悟られたくない。不治の病の当事者よりも、両親の気遣いと苦悩が胸に染みる作品だった。
オススメ度 ★★★