こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スキマスキ

otello2015-02-11

スキマスキ

監督 吉田浩太
出演 町田啓太/佐々木心音/中村映里子/八木将康/久住翠希
ナンバー 32
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ふと視線を上げたその先にある隣のアパートの2階、カーテンの隙間から若い女の着替えが垣間見える。まったくの無防備な姿は誘惑の甘い香りを放ち、男は泉のごとく湧き上がる劣情に煩悶しのたうち回る。物語は、隙間フェチの大学生が、夜毎にのぞき見していた女子大生に人生を変えられていく過程を描く。“アホでモテないダサい俺”。そんな劣等感の塊だった自分を彼女は笑顔で肯定してくれる、たとえ酔っぱらった勢いでも。主人公はたちまち恋に落ち、身も心も虜になっていく。童貞男の抱く“理想の恋人”を現実世界に再現したような天真爛漫な魅力を、少しバカっぽく映るほどの明るさで佐々木心音が熱演、美人すぎず手の届くレベルなのが更なる妄想を掻き立てる。

大学二部の建築科に通うヘイサクは学食で昼間学部のフミオに声をかけらけれ、友人たちと飲みに行く羽目になる。フミオの胸元が気になるヘイサクだが、フミオが“カーテン越しの彼女”とはなかなか言い出せない。

フミオもまた“研究”の立場から窓越しにヘイサクを盗撮し、彼を知っていて近づいていたのが明らかになる。言葉を交わしたことのない男女がお互いのプライバシーを盗み見していたのに、出会った後はテクノロジーを介さずきちんと交際する。その、あくまでアナログに感情をぶつけ合う距離感が古臭くかえって懐かしい。フミオのカメラもいまだフィルム式、デジタルを介さない、生身の人間同士の付き合い方が新鮮だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてフミオへの思いを抑えきれなくなったヘイサクは、のぞき見を告白した上で、フミオへの気持ちをぶちまける。このあたりも、下手にSNSなどで探りを入れるのではなく、相手に直接伝える。空間的に離れている場合はネットを使うのも仕方ないが、会える場所にいて、話せる機会があるのなら、顔を合わせてコミュニケーションを取るのがいちばんいいというネット社会へのアンチテーゼが心地よかった。ただ、理系の授業で板書の縦書きはしないと思うが。。。

オススメ度 ★★*

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