こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

君が生きた証

otello2015-02-23

君が生きた証 RUDDERLESS

監督 ウィリアム・H・メイシー
出演 ビリー・クラダップ/アントン・イェルチン/フェリシティ・ハフマン/ジェイミー・チャン/セレーナ・ゴメス/ローレンス・フィッシュバーン
ナンバー 44
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

もっと近くに感じていたい、もっと気持ちを理解してやりたい。突然の悲劇で最愛の息子が命を落として2年、底なしの喪失感の整理はつかないまま、息子が作詞作曲したCDを爪弾き口ずさむうちに彼と一緒にいるような気になっていく。それは他人への思いやりや優しさに満ちた楽曲、男は息子の代わりに歌うことで己の人生を見つめ直す。物語はそんな主人公が若い仲間を得て立ち直っていく過程を描く。愛と友情、夢と未来、理想と現実、歌詞に込められたメッセージとなめらかなメロディは多くの人々の心をつかみ、やがて彼らはより大きなオファーを受ける。ライブの熱気、演奏の共同作業を通じて若者たちからもらった前に進む勇気、そのなかで届かなかった息子への思いを伝えるようとする父。想像を絶する苦悩を抱えながら感情を隠して生きる姿が息苦しいまでに切ない。

銃乱射事件で息子のジョシュを亡くしたサムは、失意と折り合いをつけながらヨットでひとり暮らしを続けている。ある日、ジョシュの遺品から見つけた歌を小さなライブハウスで歌うと、クエンティンと名乗る青年に声をかけられる。

クエンティンはバイトをしながらプロを目指すミュージシャンンの卵。おしゃべりなのにシャイなクエンティンはサムの歌に希望を見出し、サムもまた彼にジョシュを投影する。さらにベースとドラムを加えバンドを組んだ彼らは人気者になるが、歌がジョシュの作品とは言い出せないサム。ところが、秘密が大きくなるのを恐れつつも、彼は徐々に音楽の持つ力に癒され背中を押されていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、ジョシュが作った歌を歌うのは本来ならば禁じられた行為。ジョシュのガールフレンドだった娘がクエンティンに真実を話してしまう。単に息子に先立たれた哀しみではなく、他の若者の将来を奪ったという良心の深い呵責。ジョシュを憎むべきかもしれない、きちんと遺族にも謝罪しなければならない。それらすべてから逃げてきた弱さに気づいたとき、サムは初めて自分の抑えていた本心をストレートに吐き出す。それでも息子を愛していたと。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓