海にかかる霧 海霧
監督 シム・ソンボ
出演 キム・ユンソク/パク・ユチョン/ハン・イェリ/イ・ヒジュン/ムン・ソングン
ナンバー 43
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
大漁に沸いた時代ははるか昔、水揚げは細り、いまや漁船の修理もままならない。融資は断られ、妻には浮気され、まとまったカネが必要になった男は仕方なく違法行為に手を染める。ところが、部下や自分の安全すら危ういボロ船では、見知らぬ他人の命まで責任はとれない。物語は、不法労働者の密航に手を貸す漁船の乗組員たちが徐々に悪意に侵食されていく姿を描く。逃げ場のない小さな漁船、海に落ちれば生き残れる保証はない。飛び散る鮮血、切断された人体、地獄絵図の中で葛藤し苦悩しながらも生存本能をむき出しにしていく過程は、人間の本性はエゴイズムであると訴える。
不漁で資金繰りに窮したカン船長は、中国在住朝鮮族の密入国を請け負い、時化の夜に密航者を受け入れる。公海上で船を乗り移る際に転落した女・ホンメを助けた若手乗組員ドンシクは、彼女を機関室に匿って世話を焼く。
狭い甲板の上で雑魚寝する密航者たち。彼らはみな賃金の高い韓国に出稼ぎに出て、故郷の実家に仕送りしようとする善良な人ばかり。身の上話をするうちに、乗組員たちも彼らが“荷物”ではなく誰かの家族であるという事実を実感していく。そでれも、船長のカンだけは無事に彼らを送り届けるために厳しい態度を取らざるを得ない。見つかれば逮捕され失業する乗組員と強制送還される密航者、反目しながらも相手を信じるしかない。一触即発の空気を孕みながら漁船は合流地点を目指す。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
穏やかな凪の朝、役人の査察で密航者を船倉に隠すが、漁船はガス漏れ事故を起こしてしまう。もはや身を護るにはすべてを闇に葬るしかない。だが、機関室で難を逃れたホンメは目撃してしまった。彼女を守ろうとするドンシク、良心の呵責に苦しむ機関長、さらにホンメを狙う先輩乗組員と漁船を守るために常軌を逸するカン船長。運命共同体だった船上は、濃い霧に視界が遮られ黒い欲望で覆われていく。過去は封印してもホンメへの思いは捨てきれなかったドンシクの優しさが胸にに染みる。。。
オススメ度 ★★★*