こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソロモンの偽証 後篇・裁判

otello2015-02-28

ソロモンの偽証 後篇・裁判

監督 成島出
出演 藤野涼子/板垣瑞生/石井杏奈/清水尋也/前田航基/望月歩/佐々木蔵之介/夏川結衣/永作博美/小日向文世/黒木華/尾野真千子
ナンバー 47
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“口先だけの偽善者”。彼が遺したそのひと言は、関わった者すべての胸に深く突き刺さり、抜こうともがくほど後悔と苦悩を強めていく。しかし、真実にたどり着くためには避けて通れない。あの大雪の夜、本当は何が起きたのか、何が起きなかったのか。なぜ嘘をついたのか、なぜ事実を隠していたのか。物語は死体で発見された少年を殺したと告発された同級生を裁く、中学生による審理を描く。大人顔負けの情報収集能力と粘り強い交渉力、何よりも裁判をきちんと成功させなければならないという強固な意志。ほとんどの人間は安っぽい正義感しか持っていない、だが集まれば大きな力になる。声を上げて行動する勇気こそが現状を打ち破り未来を切り開いていくとこの作品は教えてくれる。

柏木事件の被告となった大出のアリバイを証明できる人物がいると知った涼子は父に助力を頼む。一方、法廷では神原が、樹理や松子が大出から受けたイジメの数々を暴露し、大出に認めさせる。

冷静に証言する者、我が身かわいさに嘘の上塗りをする者、責められて言葉に詰まる者。証人として尋問される人々はみな大勢の注目を浴びる中、必死で最低限のプライドを保とうとする。興味本位だった傍聴席の大人たちも息を飲んで成り行きを見守っている。そんな中、樹理の母親は過剰反応を続ける。母ひとり娘ひとりの家庭、度を超えた干渉が樹理を追いつめているのに気づかず、己の小さな価値観を押し付けるのだ。いや、むしろ歪んだ愛情を注ぐ非常識なバカ親を演じることで非難の目が自分に向くように計算していたのかもしれない。笑顔なのに目は笑っていない、不気味さすら感じさせる母親に扮する永作博美が強烈な個性を放っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて明らかになる柏木の死の真相。大げさなトリックや予想もしない結末があるわけではない。映画はただ、真実が人を自由にすると訴えるのみ。それでも、弱さをさらけ出し心の痛みに押しつぶされる当事者たちの姿を見ていると、生きていくには少しの秘密と嘘、そして忘却が必要だと思わずにはいられなかった。

オススメ度 ★★★*

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