こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

otello2015-03-03

シェフ 三ツ星フードトラック始めました CHEF

監督 ジョン・ファヴロー
出演 ジョン・ファヴロー/ジョン・レグイザモ/エムジェイ・アンソニー/スカーレット・ヨハンソン/ダスティン・ホフマン/ソフィア・ヴェルガラ/オリヴァー・プラット/ロバート・ダウニーJr.
ナンバー 51
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

腕の立つコックではあるが父親としては失格だった。プライドが高すぎるゆえに雇われる立場には我慢ならなかった。ソーシャルメディアの便利さを過信しすぎて足元をすくわれた。だが、ゼロからやり直す決意をすると意外にも運命は好転し始める。カネや名誉ではない、人間に本当に必要なものは信頼できる友人と愛情を注ぐ対象。物語はクビになった料理長の、おんぼろトラックを改装した屋台での旅を描く。見た目の美しさや雰囲気を楽しむフルコースは作れない、ならばあくまで食材の風味を生かしたシンプルな料理で勝負する。その発想の転換とSNSを効果的に使った宣伝でたちまち行列のできる屋台になっていく。料理映画の王道とネットの発信力を融合させ、さらに家族の再生とロードムービーの要素を加えた欲張りな展開に満腹感を覚えた。

LAの有名レストランのシェフ・カールは料理批評家の来店に合わせて野心的な新作を考案するが、オーナーの反対で通常のメニューを供す。ブログで酷評されたことから反論するが、彼の悪口は一夜で拡散してしまう。

オーナーとの対立は決定的になり、店を辞めたカールは元妻・イネスの計らいでマイアミに飛ぶ。かねてから溝ができていた息子・パーシーと久しぶりに持てた2人だけの時間。イネスの最初の夫の好意でフードトラックを手に入れたカールは、薄切り肉にチーズや野菜を挟み特製ソースで味付けしてパンに挟むキューバサンドの屋台をオープンさせる。パンの焦げ目にまで気を使う繊細さに、客においしいものを食べさせたいというカールの思いが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてLAに戻ったカールは料理批評家と再戦、見事な落としどころで決着をみる。そう、どん底に思えても、走り出してみれば人生なんとかなるとこの作品は教えてくれる。ただ、イネスの元夫同士の会話や、股間にコーンスターチを振りかけるシーンなど、本来は爆笑を誘うのだろう。そのあたりのジョークの本質が翻訳では伝わってこなかったのが残念だった。

オススメ度 ★★*

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