こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パパ、遺伝子組み換えってなぁに?

otello2015-04-04

パパ、遺伝子組み換えってなぁに? GMO OMG

監督 ジェレミー・セイファート
出演 ジルエリック・セラリー二/ヴァンダナ・シヴァ/デニス・クシニッチ
ナンバー 75
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

自然の法則に反した人工的な操作で農作物を“改良”し莫大な利益を得る企業。人体への悪影響がないと言い切れないにもかかわらず、大半の米国民が無関心な現実。カメラは世界中のほとんどの国で“歓迎されていない”遺伝子組み換え作物=GMOが、いかに米国人の食生活に浸透しているかにメスを入れる。食品パッケージにGMO含有の表示義務を課そうとしても、バイオテクノロジー会社の圧力で法案は通らず、ファーストフード店やスーパーで堂々と売られている。消費者側も“安いから”と特に不満を示さない。反対に最貧国・ハイチではGMO種子が焼却処分されるほど拒否反応が強い。さらにバイテク企業と所轄官庁を行き来する政財界フィクサーの暗躍。“真実を知りたい、隠すから怪しむ”という市民の一言が、GMO問題の根本を象徴していた。

6歳の息子が植物の種子に興味を持つ様子を見てGMOをテーマに定めた映像作家のレミーは、家族と共に米国内のGMOをたどる旅を始める。インタビューを受けた大多数の市民が「食の安全」についての知識に乏しいのに驚き、レミーは欧州に足を伸ばす。

米国産トウモロコの85%、大豆の80%はGMO。それらを飼料として肥育された家畜の肉を含めるとGMOフリーの食品はほぼ存在しない。一方で農薬と農薬耐性のあるGMO種子をセット販売するモンサント社の戦略。しかもGMOの花粉を自然受粉した種を植えると特許侵害で訴える強欲さ。このあたりは「モンサントの不自然な食べもの」でも取り上げられたが、不都合な取材はすべて門前払いするこの会社の基本スタンスはまったく変わっていない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

モンサント社ではラットを使ったGMOの安全性実験は3カ月しか行われないが、フランスでは24カ月にわたってGMO飼料を与え続けたラットの体に起きる異変が明らかになる。人間には、数年ではGMOが原因と特定される症状は出ないだろう。だが30年摂取し続ければどうなるか。子供たちの未来を危険にさらしてはならない、そんな思いがあふれる作品だった。

オススメ度 ★★★

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