こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

国際市場で逢いましょう

otello2015-04-06

国際市場で逢いましょう

監督 ユン・ジェギュン
出演 ファン・ジョンミン/キム・ユンジン/オ・ダルス/ユンホ/チョン・ジニョン/チャン・ヨンナム
ナンバー 77
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

戦乱の中で生き別れになった父が残した“家長として家族を守れ”という言葉が少年の運命を決める。働きづめの母に楽をさせるために、優秀な弟を大学に進学させるために、妹にきちんとした結婚式を挙げさせるために、彼は自分の夢を犠牲にして泥にまみれ血を流しカネを稼ごうとする。物語は、そんな男が駆け抜けた激動の時代とともに韓国史をたどる。国中が貧しかった、みんな生きるのに必死だった、それでもがんばれば豊かになれる希望があった。何より苦労を厭わず勤勉であり続ける主人公の姿は、労働の尊さと喜びを実感させてくれる。そして家族の絆こそが人を強くし人生に豊穣をもたらすと訴える。

朝鮮戦争で難民となったドクス一家は混乱の中で父と妹がはぐれてしまう。救助船に乗った母・弟・妹とともにドクスは釜山の叔母を訪ねるが、休戦によって故郷に戻れなくなり、そこで新生活を始めるうちにダルグと親友になる。

露店の闇市や米兵にチョコレートをねだる光景はまるで占領下の日本のよう。生き馬の目を抜く環境で育ったドクスはたくましく成長し、炭鉱夫として西ドイツに出稼ぎに行き、現地で出稼ぎ看護師のヨンジャと恋に落ちる。地底での石炭堀りと老人や死体の清拭、発展途上国からの就労者に3K労働を押し付ける構造は現代と同じ。変わったのは韓国が受け入れる側になったことだろう。このあたり、国家繁栄の基礎を築いた世代に敬意を示す一方、いまや高齢化した彼らが経済発展の阻害原因にもなっている21世紀の現状と対を成す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて時は流れ、ドクスは朝鮮戦争時の離散家族を探すTV番組に出演する。広場に集まった数えきれないほどの人々がわずかな手がかりを頼りに肉親の消息を求めるなか、ドクスもまた父と妹への思いを語る。「父との約束」を守る、それだけを肝に銘じて生きてきたドクスの半生は、感情を前面に押し出す演出によって大いなる人間讃歌に昇華されていた。

オススメ度 ★★★*

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