こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

共犯

otello2015-04-25

共犯

監督 チャン・ロンジー
出演 ウー・チエンホー/トン・ユィカイ/チェン・カイユアン/ヤオ・アイニン/サニー・ホン/ウェン・チェンリン
ナンバー 94
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

世界を拒絶していた少女は死んで初めて“友人”ができた。世界から拒絶されていた少年は彼女の死を利用して友人を作ろうとした。そして、面識のないはずのふたりの思いがシンクロしたとき新たな悲劇が始まる。物語は女子高生の飛び降り現場に居合わせた3人の高校生が、自殺の原因を調べるうちに思わぬ事実に遭遇し、苦悩する姿を描く。偶然と必然、残された手がかりと仕組まれた罠、様々な思い込みを覆していくスリリングな心理劇はじっくりと人間の闇をあぶりだしていく。定められた運命なのか予測できない未来なのか、ただ“死”を媒介としなければリアルな対人関係を築けない、ネット社会に暮らす高校生たちの圧倒的な孤独が哀しく切ない。

いじめられっこのホアンは通学途中に同じ高校の女子生徒・シアの死体を見つける。通りかかったリン、イエと共に事情を聞かれるが、学校側の事なかれ主義に苛立つばかり。真相を知ろうと3人はシアの身辺を探る。

集合写真でもひとり横を向き、教室にも馴染まなかったシア。女手ひとつで育ててくれた母親とも折り合いが悪く素行も不良。彼女の部屋に忍び込んだ3人は日記を見つけ、シアがクラスメートにいじめられていたのを知る。自分と似た境遇にホアンは共感を抱いたのだろう、シアに代わって仕返しを企てる。このあたり、おもしろくない日常に倦んでいた3人が大人に隠れて悪巧みを実行する、その過程で彼らが味わう“高校生の背伸び”っぽいスリルが懐かしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、映画は予定調和とは一線を画し、もうひとつの死を提示することでさらなる迷宮に生徒たちを誘い込む。書きなぐられた日記と剥がれた爪、シアは死ぬ必要があったのか、ホアンの真意はなんなのか。明確な答えなどない。それでも、「異邦人」に象徴される“ここしか行くところはないのにここには居場所がない”というメッセージを発し続けていたふたつの魂が共鳴した瞬間の息苦しさだけは、生きている者の心に深く突き刺さる。“愛”の反対語は“無関心”であると。。。

オススメ度 ★★★

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