こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

Mommy マミー

otello2015-04-30

Mommy マミー

監督 グザビエ・ドラン
出演 アンヌ・ドルバル/スザンヌ・クレマン/アントワン=オリビエ・ピロン/パトリック・ユアール/アレクサンドル・ゴイエット
ナンバー 99
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

わが子に快適な暮らしをさせたいと願う母、母の思いを正面から受け止めようとする少年。ふたりはお互いを見つめるあまり、“普通”からはみ出てしまう。その結果社会を敵視し、ますます孤立を深めていく。あまりにも不器用な母と子、極端に幅の狭い画面サイズが彼らが感じる窮屈さ象徴する。物語は多動性障害の少年と彼の母が、世間に馴染もうと奮闘する姿を描く。感情の昂ぶりと衝動を抑えきれない息子に手を焼きながらも、彼を異物扱いする者には徹底的に抵抗する母。日本の障害者家庭ように、周囲に配慮したり、迷惑をかけても謝ったりはしない。ハンデを背負った人間が誇り高く生きる、それがどれほど険しい道なのかこの作品は教えてくれる。

ADHDのスティーヴを退院させ自宅に引き取ったダイアン。ある日、向かいに住む失語症のカイラと知り合い、生活に変化が生まれる。カイラもスティーヴの勉強をみるうちに、彼の症状に共感し、徐々に吃音が改善されていく。

トラウマを負ったカイラも、ダイアンとスティーヴが偏見を持たずに受け入れてくれたおかげで少しずつ変わっていく。初めて出会った心を許せる他人、彼らの人生は突然外に向かって開け、それに伴ってスクリーンサイズも横に広がる。傷つかないようにとまとっていた鎧を外せば、こんなにも世界は違って見える。障害者なりの自分らしさとは何か、ほんのわずか理解を示してやれば彼らも適応できるかもしれない、映画はそんな可能性を提示する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが過去の放火事件の賠償請求が届いたことから母子の日常は一変、ダイアンの苛立ちはそのままスティーヴに伝わり、また生活が荒み始める。このままではふたりとも壊れてしまう。やはり、愛だけでは未来を築くのは無理なのか。ダイアンの決意はスティーヴにとって最良の選択だったのか。現実の前に希望が押しつぶされていく、それでももがき続けるスティーヴの背中が哀しかった。

オススメ度 ★★★

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