こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハッピーエンドが書けるまで

otello2015-05-09

ハッピーエンドが書けるまで STUCK IN LOVE

監督 ジョシュ・ブーン
出演 グレッグ・キニア/ジェニファー・コネリー/リリー・コリンズ/ローガン・ラーマン/ナット・ウルフ/クリステン・ベル
ナンバー 90
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

父の日常は停滞したまま前に進めない。娘は成功をつかみかけたのに不満気な態度を隠さない。息子は傷つくのを恐れ殻にこもっている。人間の真実を文章にする才能に恵まれた父子、だが何かが足りないせいで足踏みしている。それは思いを口にする勇気なのか、周りの人々への気遣いなのか、表現に幅とリアリティを持たせるための実体験なのか。物語は作家の父と文筆の道を目指す姉弟がそれぞれの“現在”に苦悩を抱え葛藤する姿を描く。決定的に欠けているのは母親の存在。近くにいるのにもう家族ではない、にもかかわらず完全な他人にはなりきれない。嫉妬、わだかまり、居心地の悪さ、本当はきちんと愛を伝えたいのに、つい臆病になる彼らの微妙で繊細で煮え切らない感情に共感を覚えた。

別れた妻・エリカに未練を残すビルは、同級生のケイトに恋をした息子のラスティにもっと世間知を高めるよう促す。一方、娘のサマンサはエリカの浮気現場を見てから恋愛に否定的になっていた。

ケイトと付き合い始めたラスティは彼女の性癖を知るにつれ戸惑う。サマンサは口説いてくる学生の母が重篤と知って自分と母の関係を思う。ビルはセックスフレンドからデート相手を探せと勧められる。取り立てて劇的なことが起きるわけではない普通の毎日、それでもひとつひとつの小さな出来事の積み重ねが人生であると彼らの行動は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、サマンサの処女作の出版パーティ中の“事件”で、ビル・エリカ・サマンサ・ラスティの4人はもう一度一つにまとまる。いくら家族でも、平穏な暮らしの中ではどこかで綻びが見え始めるもの。だから力を合わせて同じ方向に進まなければならないハプニングが必要なのだ。誰もが過ちを犯す、でも家族だけは味方でいてくれるはず。個人主義が発達しているからこそ、機会があるたびに言葉とハグでお互いの気持ちと信頼を確かめ合う、そんな家族の在り方が温かい余韻を残す。

オススメ度 ★★★*

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