こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ズタボロ

otello2015-05-14

ズタボロ

監督 橋本一
出演 永瀬匡/清水富美加/堀井新太/成田瑛基/荒井敦史/石田卓也/木村祐一/佐藤二朗/平田満/南果歩
ナンバー 88
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

決斗に赴くときの昂揚感が忘れられない。さらに、殴られ蹴られボコボコにされてもなお、内なるエネルギーを解放しアドレナリンを体中に巡らせる快感は、肉体的な痛みを超越した満足を得られる。そして、一緒に闘った仲間との友情が認められたい欲求を満たし、己を唯一無二に高めてくれるという陶酔に浸らせてくれる。物語は、不良を気取る高校生が様々な抗争でヤクザや準構成員と関わりを持つ中、本当に大切なものは何かに気づいていく過程を描く。中途半端な覚悟ではつぶされるだけ、死に物狂いで走り続ける奴だけが生き残る厳しい世界の一端を見せられて、怖気づき迷い苦悩しながら進むべき道を模索する主人公たちの破滅的な青春は、あまりにも切なく哀しい。

中学時代の友人と立川の暴走族に入ったコーイチは、毎日続く先輩のヤキ入れに耐えかね脱退しようとしている。ある日、新宿のグループと衝突、彼らからも暴走族からも逃げ回る身になる。

学校では植木や鬼といった新しい友達ができるが、所詮高校生の力では暴走族や半グレに太刀打ちできず、ヤクザの叔父にケツ持ちを頼もうとする。テキヤの屋台で働いているうちは彼女ができたりもするが、本物のヤクザが債務者を殺すのを見て躊躇するコーイチ。一方でヤクザを嫌う母はコーイチの行動が気に入らず、体を張って止める。口は悪いが腹は坐っている、そんな強烈な肝っ玉母さんを南果歩が圧倒的な存在感で演じていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画はひたすらコーイチたちがケンカに明け暮れる姿を追う。数人の小競り合いから十数人が入り乱れる大乱闘まで、血なまぐさい暴力描写が何度も繰り広げられる。カメラは暴れまわる若者たちの中に飛び込み、時にブレたり光量不足で俳優の動きも表情も見えづらかったりするが、拳や脚が炸裂し肉が歪み骨がきしむリアルさにあくまでこだわる。黒電話や聖徳太子の一万円札などから舞台は1970年代後半の設定だろう、昭和の不良のスピリッツを堪能せてくれる作品だった。

オススメ度 ★★

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