こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬

otello2015-05-15

天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬

監督 FROGMAN
出演 FROGMAN/瀧本美織/濱田岳/犬山イヌコ/岩田光央
ナンバー 109
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あのオッサンの本名はいったいなんというのか。聞き出そうとした者はみなパ行でしゃべり使い物にならなくなる。その任務に白羽の矢が立ったのは、天国に召される直前に自らを死に追いやった人々への強い恨みを思い出し、悪魔となった少年。物語は悪の組織に操られた少年が、常識をはるかに超越した男と彼の家族と交流するうちに優しさを取り戻していく過程を描く。穏やかな表情の奥にドス黒い心を隠していた少年が本性をむき出しにしたとき世界は崩壊に向かう。阻止できるのは、不可能に挑戦し続ける不屈の魂を持つオッサンと他人を疑わない純粋な息子だけ。ナンセンスなギャグの波状攻撃がこの世のあらゆる不幸を一蹴する。

秘密結社インテリペリが開発したスーパーコンピュータは、ただひとりバカボンのパパの名前を入力できず正常に作動しない。総帥のダンテは地獄からネロとパトラッシュを召喚、パパの名前を探るためにバカボンに接触させる。

バカボンの登場人物のみならず、「フランダースの犬」そのままのネロとパトラッシュもFROGMAN調の平面的な描かれ方をする。それは、憎しみと怒りを抑制しているネロの気持ちを簡単に裏返らせる効果がある一方、パパとバカボンが繰り出す数々の一発芸に深みを持たせている。アニメ界でもCGと3D化が進むなか、手作業的な絵の動きが紙芝居に似たアナログな雰囲気を醸し出していた。そして繊細な感情を単純な変化で表現する手法は赤塚不二夫のテイストを残し、ネロやダンテなどの異物とも無理なく共存をはたす。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ネロはバカボン一家と仲良くなって人情を知るが、正体をばらされて悪魔に戻り破壊の限りを尽くす。その間、一応ダンテたちをやっつける目的はあるものの、パパとバカボンの暴走は止まらず混乱に拍車をかけるばかり。それでも、終わってしまえば起きたことすべてを肯定する。「これでいいのだ」は寛容と思いやり、何より人間愛に満ちた言葉であると、あらためて考えさせられた。

オススメ度 ★★*

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