こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビッグゲーム 大統領と少年ハンター

otello2015-05-16

ビッグゲーム 大統領と少年ハンター BIG GAME

監督 ヤルマリ・ヘランダー
出演 サミュエル・L・ジャクソン/オンニ・トンミラ/ジム・ブロードベント/レイ・スティーブンソン/フェリシティ・ハフマン/ビクター・ガーバー
ナンバー 107
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

険しい山、深い森。少年は弓矢を手に道なき道を進む。それは大人になるための通過儀礼、不安でたまらない気持ちを誰にも打ち明けられない。一方、“システム”から切り離され、最高権力者からただの男となった大統領は自らの弱さを隠そうと虚勢を張る。物語はそんな彼らが孤立無援状態で出会い、力を合わせてテロリストの追撃を退けていく姿を描く。最先端の文明とは無縁の辺境で育った少年にとって、空から降ってきた光に包まれた乗り物はE.T. との遭遇。さらに逃走から反撃に至るまで様々なハリウッド映画からの引用がちりばめられ、思わず小腹をくすぐられる。ひとりではほとんど無力でも2人なら何とかなる、その過程を子供向けの内容にせず、命がけのサバイバルに昇華したところに好感が持てた。

フィンランド山間部、13歳の誕生日に独力で鹿を狩る試練に挑むオスカリは、撃墜された専用機から脱出した米国大統領・ビルを見つける。テロリストたちはビルを生け捕りにしようとしていた。

非米国人のオスカリに大統領然と命令するビルに対し、オスカリは主導権を渡そうとしない。かしづかれるのに慣れたビルが渋々オスカリに従う場面は、国際社会で傍若無人に振る舞う米国への強烈な皮肉。そして、父に半人前扱いされていたと知ったオスカリは本物の男なるには何をすべきかに気づく。野生の“大物”を仕留めるのではなく、人間界随一の“大物”を守ることこそ自分に与えられた使命と覚悟を決めるのだ。このあたり、世界は米国中心に回っているのではないという、欧州からの辛らつなメッセージとなっている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

遠くワシントンDCの米国国防総省では、政府高官が衛星映像を通じてオスカリとビルの動向を見守っている。そこで明らかにされる、テロリストの本当の目的と事件の裏で糸を引く黒幕。全面戦争は望まないがある程度の緊張は必要とする、危機を演出する勢力は確かに存在する。“平和”がいかに絵に描いた餅にすぎないかを、この作品は考えさせてくれる。

オススメ度 ★★★

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