こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チャッピー

otello2015-05-26

チャッピー CHAPPIE

監督 ニール・ブロムカンプ
出演 シャルト・コプリー/デーヴ・パテル/ニンジャ/ ヨーランディ・ヴィザー/ホセ・パブロ・カンティージョ/シガニー・ウィーヴァー/ヒュー・ジャックマン
ナンバー 119
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

自分自身で考え学び、蓄積された経験や知識から独創的なアイデアや作品を創造する能力だけでなく、知覚を通じて感情を育み、他者への優しさや思いやりの気持ちをデジタルコードで記述できるものなのか。そして不安や恐怖を与えれば怒りや憎しみが生まれるのか。物語は“意識”をインストールされたAIロボットが、心の成長と共に自我に目覚め、守るべきものは何かに気づいていく姿を描く。生みの親はへなちょこ科学者、育ての親は極悪ギャングという状況で、人間社会における弱肉強食の掟を学びつつも本質的には善良さを失わない主人公。滑らかな関節の動きが人間そっくりで微笑ましい。過去の“AI映画”のエッセンスを消化吸収しながらも、悪党に教育される設定が斬新だ。

ロボット警官の開発責任者・ディオンは、完成させた“意識”のコードを廃棄ロボットに移植する。だが、ニンジャ率いるギャング団に誘拐され、ロボットはチャッピーと名付けられてギャングのひとり・ヨーランディが育てる。

一応、殺人等の禁止事項をディオンと約束しているが、ニンジャに犯罪の片棒を担がされるチャッピー。一方ニンジャは、見本を見せるとすぐにマスターする優等生であるチャッピーに父親のような思いを抱き始め、ヨーランディも孤独を癒してやろうと母性を発揮する。最悪の環境ではあるが、いつしかチャッピーは大切にされている幸福を実感していく。荒んでいたニンジャとヨーランディ、脅えていたチャッピー。彼らが疑似親子に変化する過程で、映画は、愛が人にもAIにも良心を芽生えさせると教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、ディオンのライバルが殺人マシーンを起動させチャッピーの抹殺を図る。そこで提示される、新たな“命”の定義。人格をコード化して肉体的な死を乗り越える発想は、人格が簡単にコピーできることをも意味する。確かに愛する人の死は哀しい、しかしその喪失感を乗り越えてこそ人間だと思うのだが。。。

オススメ度 ★★*

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