こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション

otello2015-05-29

最後の1本 ペニス博物館の珍コレクション
THE FINAL MEMBER

監督 ジョナ・ベッカー/ザック・マス
出演 シグルズル・ヒャールタルソン/パゥットル・アラソン/トム・ミッチェル
ナンバー 120
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

どんなカテゴリーでも1番になりたい者は必ずいる。“息子自慢”ならばなおさら、「我こそは世界一」と誇示したくなる気持ちはやがて暴走する。それに伴う肉体的な痛みやQOLの低下といった“失うモノ”よりも、注目を浴び名を残す方が重要になってくるのだ。映画は、アイスランドにあるペニス博物館館長の半生を顧みつつ、画竜点睛を欠くキュレーションの最後の1本を巡る珍妙な競争を追う。ルーペで見ないとわからない小動物のものから大人の足ほどもある巨大なクジラのものまで、あらゆる哺乳類のペニスコレクションは圧巻。そして、いまだ空白のままの人間ペニス展示スペースを埋めようとする人々の珍奇なエピソードの数々は、提供者が真剣なほど滑稽さが増し、彼らを追うカメラの視線が柔らかいユーモアで包まれていく。

ウシのペニスをもらったのをきっかけに、動物のペニス集めをはじめたシッギ。唯一未入手の人間のペニスを求め、元冒険家の老人・パゥットルから死後寄贈の同意を得る。だが、目立ちたがりの米国人・トムからの申し出も受ける。

シッギは元教師で、ペニスへの関心もごく真面目な学術的興味から生まれている。彼のこだわりは木工細工のお土産などにも反映され、ペニスに対する大いなる愛が感じられる。そこにあるのは、たとえ白い目で見られても他に誰もやらないことをやるオンリーワンの矜持。しかし、トムはタトゥーを入れたり生前寄贈を画策したりと、己の巨根への偏愛とエゴをシッギに押し付ける。自分が変人なのは自覚している、ところが自分以上に強烈な奇人のトムに、どう対応していいのかわからず戸惑うシッギのリアクションに、ドキュメンタリーならではの人間のリアルが凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

加齢とともに縮むパゥットルのペニス、パゥットルが死ぬ前に切除手術を受けようとするトム。シッギにとって、ペニスを通じて人と関わるのも楽しみのひとつだったはず。そんな彼が、トムに心底うんざりしている姿が印象的だった。やっぱり“人間代表”は普通サイズがいい。。。

オススメ度 ★★★★

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