こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

新宿スワン

otello2015-06-03

新宿スワン

監督 園子温
出演 綾野剛/山田孝之/沢尻エリカ/伊勢谷友介/金子ノブアキ/深水元基/村上淳/久保田悠来/山田優/豊原功補
ナンバー 126
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“スカウトした女に幸せと言わせる”と、縮れた金髪を逆立てて吠える男。若い女たちに片っ端から声をかけ、「女の接客業」を紹介する。決して彼女たちを食い物にせず、気持ちよく働かせて感謝されることを天職と心得る主人公に、仕事の本質を教えられる。商品である女たちをこまめにケアしてやる気を持たせれば、欲望を吐き出しに来る客が気前よくカネを落とす。己の利益は最後の最後、それでもWIN-WIN関係を保っているから困った時には助けてもらえる。進退窮まって街を歩いていると、スカウトした女たちのみならず喧嘩したチンピラたちまでが沈んだ顔の彼を気遣う、「みんな大好きだバカヤロウ」と叫ぶ姿は、惜しみなく与えた愛は巡り巡ってきっと自分に戻ってくると訴える。

ボコられているところを裏組織バーストの幹部・真虎に拾われた龍彦は、新宿歌舞伎町のスカウトマンになる。だが、ライバル組織・ハーレムとの抗争が表面化し、他幹部の画策で事態は二転三転、龍彦は人身御供にされかける。

そこで語られるのは、カネがすべて、カネを稼ぐやつが偉いという冷徹な理論。義理や人情よりも、競争相手を出し抜く知恵がなければ生き残れない。密かに敵と手を組み、身内を利用したりもする。そんな世界だからこそ、人間としての信頼は必死で守ろうとする龍彦の、バカだけれど一途な熱い思いが輝いて見える。自殺したキャバ嬢のために本気で泣き、シャブ漬けヘルス嬢を命がけで救い出す。カネも力もない下っ端の、男気にあふれた暴走がかえって魅力的に見えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて禁制のシャブ売買でのし上がってきた秀吉を、裏社会全体が持て余すようになる。そして明らかになる秀吉と龍彦の因縁。カネと暴力・女と権力、それらの魔力に屈しない龍彦の愚直な生き方をエネルギッシュに描き切った映像は園子温ワールド全開だ。ただ、雑多なエピソードを詰め込んだ構成はややち密さに欠けていた。

オススメ度 ★★*

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