こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロスト・リバー

otello2015-06-04

ロスト・リバー LOST RIVER

監督 ライアン・ゴズリング
出演 シアーシャ・ローナン/イアン・デ・カーステッカー/クリスティーナ・ヘンドリックス/エヴァ・メンデス/ベン・メンデルソン/マット・スミス/レダ・カテブ
ナンバー 127
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

家族の幸福が朽ち果てていくかのような放置されたマイホーム。家だけではない、コミュニティそのものが崩壊し、ゴーストタウンとなっている。廃墟はそのまま残された人々の人生を象徴し、今や無法者がのさばっている。映画は不況の影響をモロに受けた町から抜け出せない母子家庭を通じ、行き詰まった暮らしの閉塞感を再現する。それは極彩色なのにうらぶれた、美しいのに腐臭が漂う夢の残骸。ほとんど価値がなくなっても住んでいる限りローンの支払いは続く、かといって新天地でやり直す気力もない。もはや貧困層の一歩手前、それでもこの町にしがみつき何とか生き延びようとする彼らの姿が切ない。ファンタジックだがノワールな香りもする思わせぶりな映像の数々はメタファーに富み、主人公の運命を予感させる。

廃屋から銅線を盗んでカネに換えていたボーンズは、町のギャング・ブリーとトラブルを起こし目をつけられている。ボーンズの母・ビリーは借金返済のために銀行から紹介された怪しげなショーパブで働き始める。

動物園跡を根城にし、巨大なオープンカーで街の支配者であると喧伝するブリー。縄張りを荒らす者のみならずヘマをした部下にまで残忍な制裁を加える凶暴な性格だが、競争相手のいないこんな場所でしか権勢をふるえないショボさがギャングとしての器量を物語る。一方で、ビリーが勤めるショーパブでは夜毎奇怪な見世物が演じられる。暴力と退廃・血とセックス・水と炎の強烈なイメージが、もがけばもがくほど堕ちていくこの作品の世界観を見事に表現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

近所の少女・ラットから水没した恐竜館の話を聞いたボーンズは、その呪いを解くために貯水湖にボートを出す。水面から電灯部分が突き出た街路灯に灯がともるシーンは、幻想的である以上に、ここを切り抜けてもその先に希望はないというボーンズたちの未来を暗示してた。ただ、ストーリーの展開自体はぬるく、もう少しきちんとした構成にしてほしかったが。。。

オススメ度 ★★*

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