こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

海街diary

otello2015-06-15

海街diary

監督 是枝裕和
出演 綾瀬はるか/長澤まさみ/夏帆/広瀬すず/前田旺志郎/樹木希林/風吹ジュン/リリー・フランキー/堤真一/大竹しのぶ
ナンバー 139
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

縁側から見える庭の梅、居間のこたつでごろ寝、丸テーブルを囲んでの朝食、柱に打ち付けられたむき出しのコンセント。彼女たちが生活する古い一軒家は昭和後期のたたずまいを残す。海のすぐそばまで山が迫り住宅街を縫って路面電車が走る町、桜のトンネル、漁港の水揚げ、夏の花火、梅雨の紫陽花。移ろいゆく四季を丁寧に撮影した映像は日常には美しさがあふれていると再認識させてくれる。物語は両親に見捨てられた三姉妹が住む家に腹違いの四女が加わったことから起きる小さな波紋を描く。複雑な感情を抱きながらもしっかり者を演じる四女を、似た性格の長女は放ってはおけない。そんな長女と四女の繊細な機微に、奔放な次女とマイペースな三女の気持ちが立体的に絡み、家族への思いがディテール豊かに再現されていく。

幸、佳乃、千佳の元に15年前に出て行った父の訃報が届く。葬儀に出席した3人は継母のそばで居心地悪そうにしている中学生のすずを見て一緒に暮らそうと声をかけ、すずは彼女たちに引き取られる。

元来明るく活発なすずは、学校にもサッカークラブにもすぐに馴染む。三姉妹にとっては、すずは父をいちばんよく知っている存在で、彼女から父の話を聞きたがるが、すずは彼女たちの父を奪った女の娘という立場に呵責を覚えている。気が回りすぎるがゆえにすずの胸中に気づいてしまう幸は、一方でだらしない実母につらく当たったりする。その過程で、愛憎入り混じった血縁関係のややこしさと愛おしさが、一家の行事や親族との付き合いの中で浮き彫りにされていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“父母と子供たち”といった一般的な家庭像とは異なるが、身近なエピソードの数々はまさにホームドラマ。“男子禁制の女子寮”的な楽しさも、女同士の葛藤もいつか失われる時が来る。それがわかっているから“今”を大切にしたいと4人とも願っている。海岸で戯れる四姉妹の姿は、幸福とは懐かしい思い出に昇華された記憶をどれだけたくさん持っているかで測られると示していた。

オススメ度 ★★★

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