こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

チャップリンからの贈りもの

otello2015-07-27

チャップリンからの贈りもの La rancon de la gloire

監督 グザビエ・ヴォーヴォワ
出演 ブノワ・ポールブールド/ロシュディ・ゼム/キアラ・マストロヤンニ/ピーター・コヨーテ/セリ・グマッシュ/ナディーン・ラバキー
ナンバー 176
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

友情を大切にし、家族を愛している。不器用で短気だけれど性格は真面目。にもかかわらず社会は移民である彼には冷たい。物語は妻のためにチャップリンの遺体を“誘拐”した男たちの切なく愚かな犯行を描く。貯金はなく仕事は低賃金の肉体労働、利発な娘にまともな教育を受けさせてやれない男が、勤労意欲は低いが頭の回転は速い親友が持ちかけた計画に心ならずも加担する。人を傷つけるわけではないと自らに言い聞かせながら手を汚す主人公、しかしその行動は間抜けでユーモラス、完全犯罪とは程遠い杜撰さはすぐに破綻してしまう。どんなに悲しくても人前で笑いを取らなければならない道化師の姿が、どんなに頑張っても空回りする彼らの人生を象徴していた。

スイスに不法滞在するオスマンは刑務所帰りのエディに住居を提供、娘のサミアもエディになついている。ある日、入院中の妻の治療費が公的補助の対象にならないと告げられ、エディに言われるままチャップリンの棺を盗む。

墓から掘り出した棺を盗難車で運ぼうとする2人、それは想像以上に重くなかなか荷室に乗らない。死人を冒涜するのはやっぱり気が進まないオスマンは、中止にするタイミングを計っているかのよう。最低限のつつましい生活すらさせてもらえない怒りをあらわにするより、内省的になるオスマン。カメラはそんな彼らに切迫感を持ち込むのではなく、むしろ寄り添うように見つめる。苦しい時も愛と希望を忘れてはいけないというチャップリンの映画のごとく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“身の代金”受け渡しに失敗した後、焦った彼らはあっさり逮捕される。それでも、事情を知ったチャップリンの秘書や遺族のはからいで異例の判決を受ける。死してなお、弱き者の生きる道標となるチャップリンヒューマニズムは、だが、どこかペーソスを湛えていた。ただ、もう少し緩急をつけ展開を早くすれば引き締まった印象になったはずだ。。。

オススメ度 ★★*

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