こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヴィヴィアン・マイヤーを探して

otello2015-08-07

ヴィヴィアン・マイヤーを探して Finding Vivian Maier

監督 ジョン・マルーフ / チャーリー・シスケル
出演
ナンバー 175
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

何人も踏み込ませない壁を築き、肉親も親しい友人も作らなかった。何時もカメラを首から下げ、町で出会った人々に不躾にレンズを向けていた。極端な秘密主義、年老いてからはさらに偏屈ぶりに磨きがかかり、誰も寄せ付けなくなった。映画は大量のネガを残して死んだ無名の写真家の実像に迫る。撮影しても発表する意志はなかったのか、フィルムは管理もされず倉庫に保管されたまま。ところがポートレートは一瞬で被写体の人生を連想させる物語性を持ち、見る者の心を鷲掴みにする。彼女はいったい何者なのか、どんな生涯を送ったのか。チケット、レシート、メモ等膨大な遺品を整理し、彼女と関わった人物を訪ね、足跡をたどる旅は、精緻なミステリーのようだ。

オークションで落札したヴィヴィアン・マイヤーのネガをプリントしたジョンは、独特の味わいに興味を持ち、彼女の経歴を調べ始める。すでに亡くなっていたが、彼女が乳母をしていた人々と連絡を取る。

ジョンからインタビューを受けた男女は中年を過ぎている。ヴィヴィアンはプロのカメラマンではなく、乳母や家政婦として働きながらシャッターを切り続けていたと証言する。数十年前を思い出してヴィヴィアンの毀誉褒貶を語る彼らの口から出るのは、屠殺場、交通事故、食べ残し、フランス訛り、偽名など。みな懸命にで“いい思い出”を探そうとするが、彼女に関しては奇妙な記憶ばかりで「変人」というのが共通した認識だ。ファインダー越しにしか世界を見られなかったヴィヴィアンの孤独が浮き彫りにされていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

確かなのは、ヴィヴィアンは愛とか友情とかいった、他人との距離感が緊密な感情を避けていたこと。だからといって世の中に対しシニカルに構えていたのではなく、写真を通じて自分を表現し理解してもらおうとしていたのかもしれない。もはや彼女の胸中を知るすべはない、だが、ひねくれた人柄こそが光の濃淡をとらえる才能を育てていたのは間違いない。2007年には0件だった検索結果が、15年7月末現在27000件を超えていた。。。

オススメ度 ★★★

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