こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラブ&マーシー 終わらないメロディー

otello2015-08-20

ラブ&マーシー 終わらないメロディー LOVE & MERCY

監督 ビル・ポーラッド
出演 ジョン・キューザック/ポール・ダノ/エリザベス・バンクス/ポール・ジアマッティ/ジェイク・アベル
ナンバー 192
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

大衆を魅了するメロディを生み続ける才能がプレッシャーに押しつぶされていく。期待に応えなければならない、でも新しいサウンドに挑戦したい。ただ歌で思いを伝えたいだけなのに、巨大なビジネスに組み込まれてしまった後は好きな音楽を楽しめない。それが成功と言うならばあまりにも虚しく、やがて彼は精神の均衡を失っていく。映画は1960年代、全米を席巻したミュージシャンの孤独と20年後の再生を描く。瑞々しい若者が、カネに群がる肉親のエゴに振り回される一方で、彼らには“自我”を歌った新曲をドラッグソングと否定される。さらに信じていた者たちの離反と父親の裏切り。その失望感から逃れるためにLSDを服用し繊細な心が蝕まれていく。二重あごにたるんだ腹という醜い肉体になっていく過程が主人公の不安と絶望を饒舌に物語っていた。

自動車ショールームでメリンダに声をかけたブライアンは彼女を食事に誘う。精神科医のユージーンに日常生活を管理される不満を訴えるブライアンにメリンダは同情し、彼をユージーンの治療から解放するべく家政婦から事情を聞き出す。

かつての大スターも今は見る影もない。初対面ではメリンダも彼がザ・ビーチボーイズのブライアンとはわからない。デートを重ねるうちにブライアンの飾らない人柄に惹かれ、言葉の端々から発せられるSOSを敏感に感じ取るメリンダ。そんな彼女をブライアンから引き離そうとするユージーン。海に飛び込み海岸まで泳ぐブライアンとメリンダの、束の間の自由を謳歌する姿が切ない。ユージーンに妄想性統合失調症と診断され薬漬けにされ食い物にされている現実を知ったメリンダは、ブライアンを愛していると気づく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

燦々と降り注ぐ西海岸の太陽の下での青春を謳いあげたブライアンの苦悩、それは莫大な資産を手にしたゆえの人間不信。世界から取り残されていく青年時代のパートと、愛を見つけた中年のパートの対比が、幸せな人生とは何かを教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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