こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

クライムスピード

otello2015-09-05

クライムスピード AMERICAN HEIST

監督 サリク・アンドレアシアン
出演 ヘイデン・クリステンセン/エイドリアン・ブロディ/ジョーダナ・ブリュースター/トリー・キトルズ
ナンバー 201
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

もう絶縁したつもりだった。二度と会わないと思っていた。だが、簡単には切れない兄弟の絆。不幸な家庭で生まれ育ち、兄だけが自分を守ってくれる唯一の存在、悪事の片棒を担がされ貴重な時間を無駄にしたのに、やっぱり頼みは断りきれない。物語は、まっとうに生きようとする男が、服役を終えて帰ってきた兄に再び悪の道に引きずりこまれていく姿を描く。強引に話を進められ気が付いたときにはもう後戻りできない。知らぬ間に恋人まで巻き込まれそうになっている。 “義理”という名の底なし沼に足を取られ、なんとか抜け出そうとする主人公の葛藤と逡巡と後悔がリアルに再現されていた。根は真面目な善人、にもかかわらず犯罪に手を出さざるを得ない、そんな彼の優柔不断さが人間の弱さを浮き彫りにしていた。

自動車修理工・ジミーの元に出所したフランキーが現れ、ビジネスの手伝いを頼む。黒人ギャング2人と共に取引現場に行くといきなり銃声が響き、ジミーはパトカーに追われた上、愛車を手放す羽目になる。

フランキーは左右に肩をゆすってチンピラ然と歩く。体の線が細いフランキーでは強がってるようにしか見えないのだが、実際刑務所で命を助けてもらった黒人ボスには頭が上がらず、パシリ扱い。それでもジミーの前では兄貴風を吹かせている。大人になっても変わらない兄弟の関係を利用して巧みにジミーに近づくが、ジミーが迷惑なのは分かっている。しかしジミーを仲間に入れなければボスに殺されるかもしれない。ジミー以上に危うい立場に追い込まれているフランキーの苦悩を、エイドリアン・ブロディが繊細な演技で表現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして黒人ギャングたちの銀行強盗に手を貸す兄弟。綿密に立てた計画のはずがあっさり破綻、警察に包囲されてしまう。人質を取り重火器で警官隊と対抗するが逃走経路は開かない。最後に見せた勇気が、大いなる贖罪としてフランキーの人生にわずかな救いをもたらしていた。

オススメ度 ★★★

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