こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ピース オブ ケイク

otello2015-09-08

ピース オブ ケイク

監督 田口トモロヲ
出演 多部未華子/綾野剛/松坂桃李/木村文乃/光宗薫
ナンバー 210
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

好きでなくても言い寄られると体を許してしまう。もっとしっかりしなければと思いつつも、雰囲気に流される。そんな女の眼前に、人生で初めて“風が吹いた”と思わせる男が現れる。職場は同じ住居も隣、偶然なのか必然なのか、彼女は運命を感じ彼に告白する。物語は人間関係も仕事もイマイチ冴えないヒロインの、ときめきや不安、思い込みと嫉妬を描く。動き出す前にうじうじ悩み、行動した後も後悔ばかり。強くはないし賢くもない、駆け引きはできず嘘もつけない。自信を持てないまま大人になってしまった彼女の等身大の葛藤が共感を呼ぶ。そして、大きな夢を追うのではなく小さな成功体験で満足する、失敗して傷つくくらいならと手探りで恋をする姿が現代的だ。

失恋を機に引っ越し、レンタルDVD店で働く志乃は、深夜勤後に店長の京志郎と一緒に帰る時間を楽しみにしている。だが、泥酔して京志郎の部屋で目覚めた朝、京志郎の恋人・あかりに叩き出される。

エキセントリックなあかりにうんざりしている京志郎も、志乃のユルさに惹かれている。あかりが突然消息を絶ちふたりは付き合い始めるが、志乃は「幸せすぎて怖い」と不幸の準備をする。被害妄想的とも思えるネガティブ志向、男運が悪いというよりも、己を罰するかのごとく事態をややこしくしてしまう不器用な生き方しかできない彼女の性格がいじらしい。まあ、男から見ればあまりにもとらえどころがなくてよくわからないところもあるが。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて京志郎とあかりが密かに会っていたと知った志乃は、怒りを爆発させる。温泉の男湯に乱入しケータイを投げつけ、さらに言い訳する京志郎に延々説教する志乃。裏切りを知っても何事もなかったように振る舞ってじわじわと京志郎を追い詰める陰湿な仕打ちはできない。思いっきり感情を表出させた彼女に爆笑するとともに、これだけのパワーがあればきっと自分の手で幸運をつかみ取ることができるだろうと、応援したくなるシーンだった。

オススメ度 ★★★

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