こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

永遠に僕のもの El Angel

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ほしいものは盗めばいい。邪魔な奴は撃てばいい。両親には言い訳しておけいい。警察は騙せばいい。物語は若き犯罪者の刹那的な暴走を描く。好きなように生きると言っては豪邸に侵入し、気に入った品は持ち帰る。犯罪のプロと手を組んで、もっと大きな獲物を狙う。見かけによらず大胆で行動は予測できない。計画は平気で変更するけれど、行き当たりばったりのようで計算している。汗水たらして働くなんて馬鹿な奴のすること。でもいくら大金が手に入っても心は満たされない。何を求めていたのだろうか。どこを目指していたのだろうか。犯行をエスカレートさせても答えは遠のくばかり。将来なんか考えない。いい人生なんかくそくらえ。今が充実していなければ意味がない。そんな主人公の、夢や希望に背を向けた青春が鮮烈だ。

工業高校に入学したカルリートスはラモンに近づき、ラモンの父の泥棒仲間になる。銃砲店や宝石店に侵入し予想以上の成果を上げるカルリートスにラモン父子は一目置くようななる。

強盗に入った家の老人をはじめ、目撃者には容赦なく引き金を引くカルリートス。警告するでもなく躊躇するでもなく、人を殺しても感情は動かない。相手はただ窃盗の妨害になるというだけ。だが、殺人を楽しんでいるわけでもない。簡単には理解できない彼の気持ち、かといって狂気にとらわれているのとは違う。プロファイリングできない特異な犯罪者像をロレンソ・フェロが美しく妖しく演じる。体をくねらせるダンスが優美で官能的だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

検問に引っかかり逮捕されたカルリートスとラモンだったが、カルリートス1人がうまく逃げたせいで友情にひびが入る。ところがラモンの新しい相棒・ミゲルは頭が悪く役に立たない。カルリートスはミゲルの顔にも銃弾をぶち込む。もう何人殺めたのか、それでもカルリートスはラモンを親友だと思っている。なのに彼はもういない。破滅に向かうまでのわずかな時間に感じた自由、この一瞬が永遠に続けと願いステップを踏むカルリートスの姿が切なかった。

監督  ルイス・オルテガ
出演  ロレンソ・フェロ/チノ・ダリン/メルセデス・モラーンアナ/ダニエル・ファネゴ
ナンバー  194
オススメ度  ★★★


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