こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エンテベ空港の7日間 7 Days in Entebbe

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大勢の人質を前にして延々と己の経歴と功績を披露し、いかに人道的で慈悲深い指導者であるか自画自賛する狂気の独裁者。彼が支配する国に命を預けられた人々の恐怖がリアルだ。物語は、ハイジャック事件をめぐって、犯人グループと人質、救出作戦を諮る政府首脳と特殊部隊隊員たちの苦悩と葛藤を描く。犯人グループのドイツ人は良心を捨てきれず、指揮を執るパレスチナ人に動機を問われる。閣僚たちの間では強硬派と懐柔派の意見が分かれる。そして実際に現場で命を張る兵士は恋人の理解を得られず未練を残したまま任務に就く。1976年当時は機内荷物のチェックがなく、犯人グループは簡単に拳銃、自動小銃、手榴弾などを持ち込んでいる。セキュリティは無防備、現代の観点でみると非常に恐ろしい。

乗客乗員200名以上を乗せたエールフランス機が乗っ取られる。4人のテロリストはウガンダエンテベ空港に着陸させ、人質を閉鎖された旧ターミナルビルに移動させた上で、政治犯の釈放を要求する。

パレスチナ人2人と西ドイツ人2人の犯人グループは人質を選別し非ユダヤ人を解放する。肉親を殺したイスラエルに対して怒りと憎しみを抱くパレスチナ人は腹を括っているが、ドイツ人はユダヤ人に銃を向けるのをためらっている。そのあたり、頭でっかちの革命を唱えるドイツ人と流血の惨事を体験してきたパレスチナ人の覚悟の違いが興味深い。一方で、イスラエル政府は自分たちの問題ととらえ、他国の援助なしで単独で救出作戦を練る。まだスパイ衛星もGPSもない時代、人間がもたらした情報を頼りに立案し実行に移す。そんな、周囲を敵に囲まれたイスラエルの軍人・諜報機関の優秀さが印象的だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

椅子に座った十数人のダンサーたちが順番に立ちあがり激しく体を揺らす。ひとりが前のめりに床に倒れ込んで舞踊の列から外れる。他のダンサーは伝統的な衣装を脱ぎ捨てるのに、彼女だけは服を着たまま投身を繰り返す。流れに抗い自己主張を通すには痛みが伴うことを、この奇妙なダンスは訴えていた。

監督  ジョゼ・パジーリ
出演  ダニエル・ブリュール/ロザムンド・パイク/エディ・マーサン/リオル・アシュケナージ/ドゥニ・メノーシェ/ベン・シュネッツァー
ナンバー  186
オススメ度  ★★★★


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