こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち

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競争相手に1000分の1秒差をつけるだけで市場の儲けを総取り、濡れ手に粟の大金が転がり込んでくる。ところが、そのアイデアを結実させるためには乗り越えるべき難問が山積されている。物語は、1600キロに及ぶ光ケーブルを直線で埋設しようとした男たちの奮闘を描く。あくまで通信速度にこだわり、わずかなカーブも許さない。民家から地権を買い、硬い岩盤を掘削し、地上げに応じない信仰集団の村は大深度を通す。一方で出資者を説得し工事業者に指示を出し新たなアルゴリズムを開発させる。恐ろしいほどの早口でまくしたて、口八丁手八丁で不可能を可能と信じさせる主人公をジェシー・アイゼンバーグが熱演、さらに彼ら以上に強欲で冷酷で自信家の女上司をサルマ・ハエックが怪演、マネーゲームに毒されたウォールストリートの住人をシニカルに再現する。

株式トレーダーのヴィンセントはプログラマーののアントンと共に最速取引を実現する計画を立て、密かに実行に移す。だが、元上司のエヴァに知られ、執拗な妨害工作を受ける。

資金調達は順調だった。工事技術者と業者もすんなり見つかった。土地の買収もおおむねうまくいっている。しかし、巨大山脈が立ちふさがり通常の掘削機では歯が立たない。エイミッシュの村人はカネに興味を示さずケーブル敷設は一切認めない。机上のプランでは見えなかった現場のトラブルを次々とヴィンセントが解決していく姿は、理想を具象化するためにチャレンジする者は他人の倍働く覚悟と行動力が必要と訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

アントンの居場所を突き止めたエヴァは彼を脅迫した上にFBIに刑事告訴、ヴィンセントも胃がんの進行で体調がすぐれず、もはや敗色濃厚。ひと握りの勝者の陰で彼らのような敗者が大勢いる。それでもほどほどの成功では満足せずトップを目指す。健全とは思わないが、米国の自由競争・資本主義の精神はまだまだ健在だとこの作品は教えてくれる。ただエヴァ流鉄塔のほうが合理的と素人でも気づきそうだが、当時は技術的障壁が高かったのだろうか。

監督  キム・グエン
出演  ジェシー・アイゼンバーグ/アレキサンダー・スカルスガルド/サルマ・ハエック
ナンバー  233
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://hummingbirdproject-movie.jp/