こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘルボーイ

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地上に這い出した巨大な怪物たちは逃げまどう人々を襲い、食らう。つかんだ両手と両足を左右に引っ張って胴体を引きちぎり、逆さ吊りに両足を持って股裂きにし、頭を踏みつぶす。まるで残虐なハンティング楽しむかのようなショットの連続はスプラッター・ホラー以上の衝撃だ。物語は、人間に育てられた “悪魔の子” が、復讐のために蘇った魔女と闘う姿を描く。真っ赤な体にいかつい顔、大きな角は切り落としてはいるが手入れは欠かせない。性格はひねくれているが正義感は強い。肉体は何度斬られても刺されても決して傷つかない。カッコよさや爽やかさとは対極にある不細工なヒーローは、“本当は暴力に訴えたくないが仕方なく相手をぶちのめしている” 感にあふれ、その瞳は哀しみに満ちていた。

米国超常現象調査防衛局捜査官・ヘルボーイが巨人を倒すために英国出張、そこでアーサー王に倒された魔女・ニムエの復活を知る。ヘルボーイ霊媒師のアリス、戦士のベンとチームを組み対処する。

英国の対魔界組織・オシリスのメンバーが中世風のコスチュームと槍、剣、そして馬に乗って巨人退治に向かう。銃器をぶっ放すヘルボーイと違い、いかにも魔術や呪術が現役で通用するこの作品の世界観を象徴していた。また、猪突猛進の猪頭の怪人やスパイダーウォークで暴れまわる片目の婆など、個性的なサブキャラもインパクトが強い。破壊する側も防衛する側も、ニムエとアリス以外はほとんどが極端な異形で、世間の偏見に耐えて生きてきたことをうかがわせる。それ故に素直な心が育たず、他人に対して懐疑的攻撃的になっているあたりが新鮮だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、見せ場となるはずのバトルシーンは単調で、その他のアクションにもスピード感も切れ味も欠けるのが残念。もがれた手足が飛んできたり、ぶちのめされた死体が崩壊したりと、飛び散る血や肉片の量は多いのだが、もっと臨場感があってめくるめくような体験をさせてほしかった。ロブスターがキャプテンアメリカそっくりなのが笑えたが。

監督  ニール・マーシャル
出演  デビッド・ハーバー/ミラ・ジョボビッチ/イアン・マクシェーン/サッシャ・レイン/ダニエル・デイ・キム/トーマス・ヘイデン・チャーチ/td>
ナンバー  234
オススメ度  ★★


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