こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

空の青さを知る人よ

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恋人との未来を棒に振った姉は、自分のために地元に残った。時は流れ、姉の幸福を奪ってしまった自責の念は日に日に大きくなる。そんな時現れた “冷凍保存された” 過去。物語は、ミュージシャンを目指す女子高生と13年前の姿のまま変わらない姉の元恋人のはかない恋を描く。時間は残酷なまでに、確実に姉を老けさせている。中途半端に夢が叶ってしまった元恋人は煮え切らないまま音楽を続けている。ふたりの葛藤を見てしまった若い男女は、理想と現実のギャップに動揺を隠せない。それでも、本当に大切なものは何か、他人を思うというのはどういうことなのかを学んでいく過程は、人は決してひとりで生きているのではなく、きっと誰もが誰かに必要とされていると教えてくれる。

年の離れた姉・あかねと暮らすあおいは、ギター練習場のお堂で高校生のまま年を取っていないしんのと出会う。しんのは13年前、あかねと別れて東京に出たはずだった。

あかねが働く市役所の町おこしに出演する演歌歌手のバックギタリストとして一応プロになった慎之介は、ぱっとしない己を恥じている。なによりあかねとはばつが悪いのか、彼女の前では素直になれない。きちんとけじめをつけたわけではなく、お互いに未練を残している。いや、本心ではずっと再会する機会を待ち望んでていた。秩父と東京、電車でたった2時間足らずの距離なのに自らは会いに行こうとはしなかった。よりを戻せばどちらかが今までの人生を捨てなければならない。まだ相手が好きなのに意地を張り合う、大人になり切れないあかねと慎之介の心情がリアルで共感を呼ぶ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、あかねが廃坑に閉じ込められると、しんのは呪縛を破ってお堂を飛び出し、あおいと共に救出に向かう。その際、ふたりは手をつないだまま木々を飛び越え、宙を舞い、上空から落下する。「天気の子」にも同様のシーンがあったが、空や雲や風景の細密度ではハイビジョンと4Kほどの差があった。躍動感や浮遊感はけ負ていなかったけれど。。。

監督  長井龍雪
出演  吉沢亮/吉岡里帆/若山詩音/松平健/落合福嗣/大地葉/種崎敦美
ナンバー  245
オススメ度  ★★*


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