こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マレフィセント2

f:id:otello:20191016094936j:plain

緑深い森で平和に楽しく暮らしている妖精たちは、町の人間たちから見れば得体のしれない不気味なもののけ。逆に妖精たちには人間が暴力的な怪物に思える。大きな川を挟んで隣り合う2つの世界はひとつになろうとするが、巨大な陰謀がその前に立ちふさがる。物語は、恨みと憎しみを腹に持つ女王に騙された魔女の復讐を描く。大いなる魔法をもってしても科学の力には敵わない。人間は広大な森を手に入れるためには手段は選ばない。そして、より豊かになりたいと願う彼らの強欲の前に妖精たちの楽園は崩れていく。自然と共生する妖精たちにとって、もはや人間は脅威でしかないのだ。数多のおとぎ話で語られてきた魔物や化け物を退治する冒険譚は、人間側の “正義” の一方的な押し付けであるとこの作品は訴える。

森の妖精たちの女王・オーロラは隣国の王子・フィリップにプロポーズされ大喜び。養母・マレフィセントは結婚に反対するが、オーロラの決意は固く、王宮での晩餐会の招待を渋々受け入れる。

フィリップも父王もオーロラも、人間と妖精の国境がなくなって両者が共存するのを望んでいる。だが王妃・イングリスは過去の因縁から妖精たちの森をわがものにしようと企んでいる。食卓に着いたマレフィセントに対し不愉快な発言を繰り返して挑発、狡猾にもマレフィセントを陥れようとする。怒りに燃えたマレフィセントは羽を広げ飛び立つが弱点である鉄弾を撃ち込まれる。水に落ちたマレフィセントの痛々しい姿は、「開発」の名のもとに傷つけられていく環境を象徴しているようだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

近年のディズニー映画の例にもれず主人公は女だが、ここでは敵役も女。戦場で指揮を執り兵士たちを鼓舞している。さらに妖精虐殺に直接手を下すのも女司令官だ。一方で、王や王子を始めマレフィセントの仲間の翼人種でも男は和平派が多い。もちろん戦争を望む男たちもいるが、彼らに決定権はない。マレフィセントやイングリスが忘れたやさしさや愛を、今度はオーロラが教えてやる番ではないだろうか。

監督  ヨアヒム・ローニング
出演  アンジェリーナ・ジョリー/エル・ファニング/ミシェル・ファイファー/ハリス・ディキンソン/サム・ライリー/MIYAVI
ナンバー  240
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
https://www.disney.co.jp/movie/maleficent2.html