こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スーパーティーチャー 熱血格闘

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怒鳴ったりしても反感を持たれるだけ。説教なんかしても馬鹿にされるだけ。授業が始まっても席につかず各々好き勝手に振舞う生徒たちに、新任の先生は共感を示し、興味を引く質問をし、なぜなのかを考えさせ、彼らの気づきを待つ。物語は学習困難高校に赴任してきた教師の奮闘を追う。落ちこぼれ生徒たちのプロフファイルを読み、家庭を訪問し、何が彼らをひねくれさせたかその原因を探る。親子の葛藤、人種差別、貧困、現実逃避etc. それぞれに事情は違うけれど、先生が親身になって体当たりで解決していく姿は、時に大げさで、時に大迷惑だったりもする。それでも生徒たちの更生のために全力を尽くす先生は、彼らに真っ当な学園生活を送らせるという信念に突き動かされている。まったくユニークな熱血教師像とその描き方に目が点になった。

米国帰りのチャンは問題クラスを受け持つ。居眠り、食事、演奏、喫煙……学習意欲ゼロの生徒たちに学びの楽しさを伝えようとするうちに、様々なトラブルに巻き込まれていく。

双子を虐待するアル中父にはセラピーを受けさせる。カーレーサーを夢見る女子の父はゴーカートに乗せ和解させる。極めつけは、八百長に利用された生徒を救うために格闘技試合場の控室に殴り込み、チャンピオンを含む多数の格闘家との大立ち回り。優しい言葉で論理的に諭すのみならず体を張った行動で己の理想を貫き通す、もはや俳優や格闘家としてではなく実践を伴う思想家のような風格を身につけたドニー・イェンの立ち居振る舞いは、気高く美しかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ニュースで報道されたのを機に一躍有名人になったチャンは隠していた経歴まで明かされ、一転して学校では生徒からも同僚からもヒーロー扱いされる。豊富な実用知識、圧倒的な強靭さ、修羅場での冷静さ。それらがみな米軍仕込みの本格的なものと知ってみな一目置くのだ。彼もかつては暴力的な落ちこぼれだった。だからこそ生徒の気持ちが理解できる。人生の意義が見つかるまでには、挫折も必要だとこの作品は教えてくれる。

監督  カム・カーワイ
出演  ドニー・イェン/ジョー・チェン/ユー・カン/ドミニク・ラム
ナンバー  236
オススメ度  ★★*


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