こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジェミニマン

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仕掛けてきたのは圧倒的な身体能力を持つ若者。洗練された狙撃の腕前、屋根伝いに駆け猛激走するバイクを自在に操る。その先読みする動きはかつての自分そっくりだった。物語は、伝説のヒットマンが己のクローンと闘う姿を描く。気づかぬうちに遺伝子情報のコピーを取られ、殺人兵器に育てあげられていた。経験値は浅いが闘争本能は激烈、どこまでも食らいついてくる。だが彼もまた感情がある人間、出自を知ったときアイデンティティクライシスに陥り、判断力と行動力が鈍っていく。本当の悪党は誰なのか、命を狙ってくるのはどの組織なのか。裏切りと欺瞞の中、信頼できる友人と巻き込まれた女を連れ、主人公は真実を探っていく。標的は水平方向に走る特急列車の乗客というありえない狙撃をするプロローグに嫌な予感を覚えた。

心の迷いを感じ始めたヘンリーは引退を決意する。ところが、前回のターゲットの正しい素性を告げられた直後に特殊部隊が送り込まれてくる。彼らを撃退したヘンリーは監視者のダニーと共に逃亡する。

協力者・バロンの飛行機でコロンビアに渡るが、そこで襲撃してきたのが凄腕の殺し屋。交通量の多い路地を猛スピードのバイクで疾走したあと、バイクそのものを武器として使いこなす。前輪を止めて後輪をヘンリーにぶつけたり、タイヤで踏みつぶそうとしたり、横倒しにして薙ぐように攻撃してきたり、一輪走行で体当たりしてきたりと、ユニークなアイデア満載の格闘シーンには思わず息をのむ。その後ブダペストに飛んだヘンリーたちは、さらなる陰謀に直面していく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

再度クローンと対峙したヘンリーは、彼の精神的な弱みに付け込み説得を試みる。育ての父にずっと嘘を刷り込まれてきた怒り、苦悩を打ち明ける友人もいない孤独、そしてコピーにすぎないと悟った葛藤。クローンは徐々にヘンリーこそが理解者だと思い始めていく。たとえ殺し合いを演じた敵でも同じDNA配列の相手には共鳴するものがある。そんなありふれた展開に期待は萎んでいった。

監督  アン・リー
出演  ウィル・スミス/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/クライブ・オーウェン/ベネディクト・ウォン/ダグラス・ホッジ
ナンバー  255
オススメ度  ★★


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