こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジョン・デロリアン

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カモメが翼を広げるようにドアが上方に開き、いつか空を飛ぶことができるようになる。引っ越した先の隣人は、夢のクルマに人生を賭けた男だった。物語は、麻薬密輸で逮捕された男がおとり捜査に協力し、伝説の自動車設計者に濡れ衣を着せようと画策する姿を描く。官憲の手先にならなければ長い懲役刑が待っている。本物のギャングを罠にはめる度胸はない。だが、有名な起業家ならば自分の身代わりにできるかもしれない。いつも他人の顔色をうかがっているがカネには汚い、大物ぶっているけれど妻には頭が上がらない。身を守るためには平気で人を欺き、その場限りの嘘を上塗りしていく。そして追い詰められた彼は最後の大博打を打つ。そんな小心者だが虚栄心も強い主人公をジェイソン・サダイキスがみっともないまでにリアルに演じていた。

司法取引の末FBIの情報提供者となったジムは、自動車業界の風雲児・デロリアンと知り合う。デロリアンが開発した新車は革命的だったがあまり売れず、彼は資金繰りに困っていた。

密輸組織のボスに借りがあるジムは、ボスをデロリアンに紹介する。最初は裏社会とは距離をとりたがっていたデロリアンも、工場が倒産の危機にあると知ると決意が揺らいでくる。FBI捜査官からボス逮捕につながる証拠をせかされているジムは、ビビッてなかなか行動を起こせない。FBIと麻薬組織の板挟みで身動きできないまま尻に火が付いたジムは、金策に走り回るデロリアンと儲け損ねた分を取り返したいボスを介した取引をでっちあげる。正義にも良心にも背いているのはわかっている、結論をできるだけ先延ばしにすれば何とかなると勘違いしているジムの弱さが滑稽に再現されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

デロリアンの裁判に証人として出廷したジムは、デロリアンとの関係を執拗に訊かれる。そこでも、いかにも自分は利用されただけで責任はないというような発言を繰り返し、言い逃ればかりを口にする。デロリアンの器の大きさに比べ、陳腐なまでのジムの卑小さこそが人間の本質をついていた。

監督  ニック・ハム
出演  リー・ペイス/ジェイソン・サダイキス/ジュディ・グリア/マイケル・カドリッツ/エリン・モリアーティ/イド・ゴールドバーグ/ジャスティン・バーサ/コリー・ストール
ナンバー  227
オススメ度  ★★★


↓公式サイト↓
http://delorean-movie.jp/