こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スペインは呼んでいる

f:id:otello:20191115131204j:plain

“50代は人生の絶頂期” そう宣言する2人のオッサンは南欧の名物料理を満喫する。物語は食レポ取材のためにスペインに渡った脚本家と彼に同行する俳優のクルマ旅を追う。英国からフェリーに乗り2人だけのドライブを続ける。観光名所のみならず道中目についたマイナースポットにも立ち寄り異国情緒を味わう。一応町一番のレストランでおすすめメニューに舌鼓を打つが、あくまで会話を楽しむのが目的であるかのよう。いつの間にか本末転倒している。クリストファー・リーからマーロン・ブランドアンソニー・ホプキンスまで、名優たちをまねたおしゃべりは今回も健在。劇的な出会いや別れがあるわけでもなく、ワクワクする冒険をするわけでもないのにこんなにも高揚する。同じような価値観を持ち同じ時間を共有できる友人を持つ贅沢をこの作品は教えてくれる。

スペインに上陸したスティーブとロブはさっそく地元の名店で食事、これからの1週間をどう過ごそうか話し合うが、突然の夕立に料理は台無しになる。

映画業界に身を置く2人の話題は必然的に映画が中心になる。ふとした言葉の綾でかつて見た名画のワンシーンが記憶によみがえると、たちまち彼らはそのキャラクターになり切って演じた俳優の話し方から癖まで巧みにコピーする。どちらが本物に近いかというと、微に入り細を穿つロブに軍配が上がる。中世にイベリア半島を支配したムーア人ロジャー・ムーアを掛けたネタで2人は延々盛り上がるが、同じ内容を繰り返しても飽きさせない話術はまさにエンターテイナーだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後もなん箇所か回り、夜はそれぞれの家族やエージェント・元恋人などにも電話したりするうちに、スティーブとロブの現在のバックグラウンドが少しずつ明かされる。深刻になったり面倒が起きたりもするが、スペインからではどうにもならない。こだわりを捨ててはいない、でも手の届かないことはさっさとあきらめる。経験を重ねた男たちだからこその割り切った生き方がとてもうらやましく思えた。

監督  マイケル・ウィンターボトム
出演  スティーブ・クーガン/ロブ・ブライドン
ナンバー  269
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
http://hark3.com/trip-to-spain/