こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!

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背中まで伸ばしたロン毛が俺たちの反骨の証。そう信じて仲間と音楽を続けてきたのに、田舎では馬鹿にされるだけ。物語は、フィンランドの小さな村でヘビメタバンドを組む4人の若者がノルウェーで開かれるフェスに勇躍乗り込む姿を描く。もう12年もやっているのにコピー曲ばかり。ステージに立った経験もない。やっと作詞作曲した新曲もどこで発表していいかわからない。偶然訪ねてきた音楽プロデューサーに希望を託すが返事は来ない。YouTubeなどなかった時代なのだろう、まだ人から人に情報伝達していたころの人間関係の距離感が懐かしくも温かい。大人になるのを拒否した彼らの衝動に任せた無軌道な行動がバカバカしくもうらやましかった。バンドの宣材写真を撮るために取締カメラを使うあたり非常にクールだ。

それぞれ仕事を持ちながら音楽活動をやめられないトゥロ、ロットヴォネン、パシ、ユンキの4人はちんたら練習を重ねる日々。ある日、一念発起してオリジナル曲を完成、新たな一歩を踏み出す。

ロットヴォネンの家に買い物に来たプロデューサーにデモテープを手渡したことを花屋の娘に話すと、いつの間にか噂は村中に広がり、住民のトゥロたちに対する態度が一変する。白い目で見られていたのに一躍ヒーロー扱い、ナイトクラブで歌う羽目になる。地元歌手の前座とはいえ初めてのライブ、しかし直前の凶報のせいでトゥロは気もそぞろ、なんとかマイクの前に立つがが緊張のあまり声が出ない。さらにユンキの死が彼らの青春に終わりを告げる。このあたり、モラトリアム期間を卒業したくない彼らの軟弱な反権力志向を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが出来上がった宣材写真を見た彼らは、“便秘でいるよりは漏らした方がまし” と、ダメモトでノルウェーのフェスを目指す。その間のドタバタ劇は快調かつコミカルで、ベタな展開ながらツボを押さえた演出で退屈させない。彼らの暴走はノルウェーのプロデューサーの耳にも入り、その意気を買われる。凶暴な音楽性と彼らのヘタレ具合の対比が新鮮だった。

監督  ユーソ・ラーティオ/ユッカ・ビドゥグレン
出演  ヨハンネス・ホロパイネン/ミンカ・クーストネン/ビッレ・ティーホネン/マックス・オバスカ/マッティ・シュルヤ/ルーン・タムティ
ナンバー  288
オススメ度  ★★★*


↓公式サイト↓
http://heavy-trip-movie.com/